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カラット探偵事務所の事件簿 1 (乾くるみ)

書籍情報

著者 : 乾くるみ
発行元 : PHP研究所
単行本発行 : 2008.9
新書版発行 : 2009.9 PHP NOVELS

メフィスト賞受賞作家である作者がおくる、オーソドックスな探偵事務所ものの連作短編集。

カラット探偵事務所所長の古谷とその高校時代の同級生である井上のコンビが、事務所に持ち込まれるさまざまな謎に挑む。

収録作品

  • File 1 「卵消失事件」
  • File 2 「三本の矢」
  • File 3 「兎の暗号」
  • File 4 「別荘写真事件」
  • File 5 「怪文書事件」
  • Flie 6 「三つの時計」

 

こんな人にお薦め

  • ライトなミステリ短編集が読みたい気分のあなた
  • パズルっぽい謎解きが好きなあなた

あらすじ

以下新書版裏表紙より引用

あなたの頭を悩ます謎をカラッと解決いたします――。

謎解きだけを専門に扱う探偵事務所に持ち込まれた六つの事件を、探偵・古谷が鮮やかに解決!

メールのやりとりから夫の浮気をあぶり出す「卵消失事件」、三つの和歌からお宝を掘り当てる「兎の暗号」、差出人不明の手紙から父の居場所を見つけ出す「別荘写真事件」など、『イニシエーションラブ』『リピート』で大反響を巻き起こした、乾くるみの連作短編小説集。

 

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書評

ちぐはぐ。


やはりミステリ好きとしては、たまには直球な「~~探偵事務所」とか「~~の事件簿」なんてのが読みたくなるものではないでしょうか?

まさにそういう気分で手に取ったこの作品……だったのですが、少々残念な結果に。

一番気になったのは、そのちぐはぐさ。

直球勝負の探偵ものですが、それだけに、このような探偵ものに対してワンパターンに繰り返されるツッコミも意識されているようで。

よくある第一のツッコミ「そんなミステリ的事件ばっかり扱っている探偵事務所なんてないし、あってもそれじゃあ食えないよ!」

よくある第二のツッコミ「トリック? ダイイングメッセージ? なんでわざわざそんなことするのさ?」

そのそれぞれに、結構くどく理由付けされているのはよいのですが、中途半端なのです。

例えば、第一のツッコミについては「いわゆる金持ちの息子の道楽で探偵事務所をやってるから、儲からなくても問題ない」という理由付け。
とっても直球なご都合主義ですが、それはいいのです。
短編集だし、そういうモンなんです! とばかりに言い切って物語を進めてくださればよいものを、毎回のようにそこに触れてしまいます。
本の中盤では、そのような道楽仕事をいさめるために議員をしている、古谷探偵のお兄さんもやってきて「今月赤字だったら事務所取り上げる!」と言い放ったりもするわりに、なぜかその結末が抜け落ちていたり。(その事件の結末を見る限り、どう考えても黒字にはなっていないと思われるのに、お兄さんの追及は一切無し?)

それなら、そんなところさらっと流せばいいのに、と思ってしまうわけです。
ミステリを愛する人間は探偵がどうやって生計を立てているのかなんて問題は「見て見ぬふり」が鉄則なのです!

さらに、第二のツッコミに対しては、詳しい内容はトリックの核心に触れてしまうので言えないのですが、どの事件をとっても、なんとかそのトリックなりに「そうする意味があった」というところを頑張って書いていらっしゃるのですが、どうにもこうにもその理由付けに納得できない。
そもそも本作のトリックや暗号など自体が非常にパズル的で、普通の人間の心の流れから出てくるものではないような、凝ったものが多いので、それに必然性を持たせること自体困難だと思います。
それなら、あんまり理由付けにこだわらずに「俺(作者)が考えたこの謎が解けるか!?」とストレートに読者にぶつけていただいた方が良かったと思ってしまいます。

乾先生は、軽い娯楽作品に分類される、このような探偵事務所ものなのに「やっぱり筋が通ってないと!」って思ってしまったのでしょうか?
もちろんあんまり筋が通ってないのは考え物ですが、このような直球な探偵ものの場合、そもそもその探偵の周りでばっかり大事件が起こったりするところからして、やっぱり夢物語なのですから、そこはお約束ということで流してしまって良いと思うのです。
そこをしつこく突っついてしまうと、きちんと納得させられない限り、不自然さを必要以上にアピールすることになってしまうからです。

うーん。
ケチばかりつけてしまっていますね~。
でも、もうひとつだけ……。

探偵役の古谷さんのキャラが薄すぎます。
謎解きのできる金持ちのボンボンというくらいの印象しか残りません。

最後に。
えらーくけなしてばかりの書評になってしまいました。

わたしは乾先生の作品を読むのはこれが初めてなのですが、メフィスト組の作家さんらしいので、本来はこんなストレートなミステリを書く作風ではないのかも知れませんね?(ホントに知らないので間違ってたらごめんなさい)

あまりにも典型的な探偵ものにまとめようとして、かえって典型的な探偵小説が持つ不条理、欠点ばかりが目立ってしまったように思えてなりません。

とはいえ、探偵事務所ものにしては「日常の謎」よりなライトな事件に対して、単なる真相の究明ではなく、より良い「解決」を目指す古谷探偵の姿勢は、物語の空気の暖かさを最後まで損ないませんでした。

ぜひ続編にて、多少の非現実さには素直に目を瞑って、娯楽探偵小説らしい魅力あるキャラクターと謎を見せてほしいと思います。


以下、ネタバレありです。未読の方はご注意を


まあ、何かあるだろうなと思っていたわけですが……。

いわゆる最後のどんでん返し。

鮮やかといえば鮮やかな……でもありきたりといえばありきたりな。

もう少し悔しがらせてくれるための伏線が初めの方からほしかったところです。

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