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黒死館殺人事件 (小栗虫太郎)
書籍情報
著者 : 小栗虫太郎
発行元 : 新潮社(初版)
単行本発行 : 1935
以後現在に至るまで多数の出版社より刊行。
夢野久作「ドグラ・マグラ」、中井英夫「虚無への供物」と並んで、国内ミステリにおける「三大奇書」と謳われる作品。
全編にわたる夥しい衒学趣味的文章が特徴。
こんな人にお薦め
- とにかく難解な本に挑戦したいあなた
- 「奇書」という響きにロマンを感じるあなた
- ミステリファンとしてはとりあえず読んどかないとというあなた
あらすじ
以下河出文庫版裏表紙より引用
黒死館の当主降矢木算哲博士の自殺後、屋敷住人を血腥い連続殺人事件が襲う。奇々怪々な殺人事件の謎に、刑事弁護士・法水麟太郎がエンサイクロペディックな学識を駆使して挑む。
江戸川乱歩も絶賛した本邦三大ミステリのひとつ、悪魔学と神秘科学の結晶した、めくるめく一大ペダントリー。
書評
ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい……
わかりません。
はい。
「ドグラ・マグラ」「虚無への供物」と共に日本ミステリの三大奇書の一冊ということで、わたしはすぐに読んでしまうのももったいないとばかり、今までこの三大奇書には手をつけずにいたのですが、その記念すべき1冊目にこの「黒死館殺人事件」を選択したのですが……。
どうやらわたしは「三大ミステリ」と「三大奇書」をごっちゃに考えてしまっていたようです。
明らかにこれは奇書です!
まずそもそも
本書全体の9割以上は、事件解決とは何ら関係しない神秘思想・占星術・異端神学・宗教学・物理学・医学・薬学・紋章学・心理学・犯罪学・暗号学など広範にわたる夥しい衒学趣味(ペダントリー)で彩られており - from Wikipedia 「黒死館殺人事件」
……って……
9割!!
事件解決とは何ら関係ない!!
って何なんだ!!
え~~と。
興奮してしまいました。
ゲームレビューの方なならともかく、書評の方ではあくまでもお堅く、真面目路線でと思っていたのですが、よりによって古典的名作(奇書)であるこの作品の書評ではじけてしまうとは夢にも思いませんでした。
恐るべし虫太郎。
ってか、実際のところ書評とか書けるほど理解できてないのです。
じゃあ書くな! と言われそうですが、わたしのようにいずれこの本にチャレンジをと思っている推理小説ファンも多いだろうと思いますので、素直な感想を載せておこうと思うのです。
わたしは手前味噌ながら、平均的に見れば読書量は多い方ではないかと思います。(あくまでも平均的にということですよ)最近こそ推理小説に偏っていますが、純文学、海外小説、哲学書などもある程度は読んでおり、多少難解な文章でもきちんと読めばそれなりに理解はできると思います。
それなのに……さっぱりわからんw
とにかく出てくる言葉が徹底して記号のよう。
それでも確かに一種雰囲気的なものではあるけれど、何か惹きつけるものを持っているのも事実。だからこそがんばって読み切ったのですが、法月の発言のほとんどは事件解決と関係がないというのは確かに事実でした。なのに謎を解いてしまうのだから、結局推理の道筋なんてものはあまりないんですね。
まあ、読み終わる頃にはそんな「論理的解決」なんて望む気分は消え失せていたのでそれはよいのですが、どうしても首をひねってしまうのは、具体的なトリックの説明に関してなのです。
この数々のトリックについて、一応現実的な(実現は困難だと思われますが!)解説がなされるシーンもあるのですが、それすらわかりにくいというのはどうなんだろう?
解説図まで付いているのによくわからないってのはどうなんだろう?
なんといっても「奇書」ですから、全体的な分かり易さなんてこの際どうでもいいですけど、現実的な状況説明自体がわかりにくいというのは、ちょっと問題があるような気がしないでもないです。
この辺ちょっと弱腰なのはこの作品に関して江戸川乱歩先生はじめ、大先生方が絶賛されているこの作品であり、結局理解できないわたしが悪いのか? という気がしないでもないからです。
う~ん。
確かに意味はわからなくても、中世的、オカルティック、魔術的、(ちょっと怪しい)科学的な薫りが息苦しいまでに立ちこめ、さらにその薫りが見事に日本的なヴェールで覆われているかのようなあの雰囲気は魅力的ではあるのですね。
わたしもなんだかんだで最後まで読んでいますし、いずれ本気で読み解いてやろうか、という挑戦心もなきにしもあらず。少なくとも、人に真似のできないものであることは確かです。ですから読んでおいて損はないかと思います。……が、どうせよく理解できない内容なら軽く読み飛ばしてみよう!などという考えには賛成できません。
それではおそらく読後に記憶に残るのは登場人物の名前だけってことにもなりかねませんので。
最後に、このやたら外国語を漢字で表すことで一種の耽美的雰囲気を醸し出すこの作品を読みながら思い出したひと言を記して終わりにいたしましょう。
「美少年はやたらこむずかしい漢字を使うのが好きなのだ」
by パタリロ・ド・マリネール 8世
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