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ドッペルゲンガー宮 《あかずの扉》研究会流氷館へ (霧舎巧)

書籍情報

著者 : 霧舎巧
発行元 : 講談社
新書版発行 : 1999.7
文庫版発行 : 2003.6

霧舎先生のデビュー作にして、第12回メフィスト賞受賞作。北澤大学のサークル「あかずの扉研究会」の面々が活躍するシリーズ第1作。

こんな人にお薦め

  • 漫画的設定に拒絶反応を示さないあなた
  • 伏線好きなあなた
  • 本格ミステリ要素がたくさん詰まっていればいるほど得をした気持ちになれるあなた

あらすじ

以下文庫版裏表紙より引用

北澤大学新入生のぼく=二本松飛翔(かける)は、サークル《あかずの扉》研究会に入会した。
自称名探偵、特技は解錠などクセ者ぞろいのメンバー6人が、尖塔の屹立(きつりつ)する奇怪な洋館“流氷館”を訪れた時、恐るべき惨劇の幕が開く。

閉鎖状況での連続殺人と驚愕の大トリック!
本格推理魂あふれる第12回メフィスト賞受賞作。

 

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書評

本格ミステリ好きによるコテコテ本格ミステリ

洋館で起こる連続殺人。
消えた関係者。
「誰もいなくなった」風の味付け。
物理的大トリックに理論的謎解き。
張られまくった伏線。

霧舎先生は露骨にミステリファンですね。

さらに、シリーズ設定も……。
主人公達は大学のミステリ系サークルメンバー。
いかにも系の名探偵「鳴海雄一郎」と江神部長系名探偵「後動悟」の競演。

ホントに本格ミステリファンとしてやりたいことをぎっしり詰め込んだ感があります。

物語全体の空気は、なんというか漫画的です。
「あかずの扉」研究会のメンバー自体からして、前述のふたりの名探偵、学生アリス的な記述者兼ワトスン役である「二本松飛翔」と無邪気・元気・小動物系キャラの「由井広美」のラブコメ風展開。
さらに霊能力者的ミステリアス美人「森咲枝」に解錠の名手「ジョーマエさん」こと「大前田丈」と、そのまんまゲーム化できそうな勢いです。

この辺がこのシリーズへの賛否が別れるところのような気がします。

この漫画的傾向は、霧舎先生の別シリーズである「霧舎学園」シリーズで爆発するわけですが、わたしは意外と好きです。
本格ミステリってなんだかんだであまり現実的でないところが多いです。
その中でリアリティを目指してゆくのも一つの方向だと思いますが、本格ミステリが持つ根本的な非現実感が、漫画的世界に調和しやすいような気がするのです。

だから、本格ミステリの非現実性を無理なく許容できる漫画的世界に、本格ミステリ的要素をぎっしり詰め込んだこの作品は魅力的に映ります。

もちろん、漫画的な世界というのは、人物を深く描写するにはむいていません。
実際わたしがいままでに目にしたこの作品の書評にも、そういう批判がありましたし、「人物が書けていない」という批判自体、本格ミステリにはつきものですしね。
しかし、漫画的世界の登場人物に深い描写なぞ不要です。
のび太はあくまでもヘタレ日本代表で、スネ夫は小ずるい金持ちボンボンで、ジャイアンは暴力大将なのです。

彼らが深く描写されていたらと思うとぞっとします。

また、わたしは「探偵がいつもいつも事件に遭遇するのはおかしい」とか「探偵が警察の捜査に積極的に関与できるのはおかしい」とか、そんなリアリティはどうでもいいと思っています。
だって創作なんだから。

おっと……話がずれましたが。

この物語はそういうわけで、これでもかというくらいミステリ要素を詰め込んだ作品なのですが、公平に客観的に見ると、ちょっと詰め込みすぎのきらいはあります。

詰め込みすぎで、驚きどころがかえってぼけてしまっているというか。
後半は怒濤の謎解きラッシュで、前半で提示された些細な伏線が次から次へと明らかにされ、それに対する解釈が語られます。
しかもそこにふたりの名探偵が異なる推理を提出したりして、だんだん訳がわからなくなってしまいます。
訳がわからないといっても、複雑で理解ができないのではなく、なんだか数が多すぎて、どうでもよくなってしまうというか。

それなりによく考えられた伏線も多いだけに、焦点がぼやけてしまうのはもったいないです。
ネタをあえて出し惜しみして厳選するのも、作家さんのセンスなのかもしれませんね。

しかし、デビュー作として考えると、その詰め込み具合も好感に変わります。

ホントに「できるだけのことはやった」という空気が伝わってきます。

ただ、謎解きにおいて物理トリック、心理トリックにロジカルな推理と頑張った上に、動機面についても色々趣向を凝らした霧舎先生ですが、ここは多少無理があったように感じました。

犯人が○○だったというのは良いのですが、動機がね~。
無理があるのをサイコミステリ的味付けで強引に押し切った感じです。

全体的には「素直に」本格ミステリを楽しめる方にはお薦めできる良作だと思いました。

 

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