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すべての美人は名探偵である (鯨統一郎)
書籍情報
著者 : 鯨統一郎
発行元 : 光文社
新書版発行 : 2004.12
文庫版発行 : 2007.12
鯨先生作品の中でも、随一の存在感と美貌を誇る二人の美人、早乙女静香(「邪馬台国はどこですか?」など)と桜川東子(はるこ)(「九つの殺人メルヘン」など)がタッグを組んで事件の謎を追う長編ミステリ。
鯨ファンにはたまらない「アノ」人たちも登場!
こんな人にお薦め
- 美人は徹底的に美人であるべきだとの信念を持つあなた
- 早乙女静香、桜川東子のシリーズ作品を読んでいるあなた
- 歴史ミステリが好きなあなた
- ドタバタ活劇風の物語が好きなあなた
あらすじ
以下、新書版裏表紙より引用
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美貌の歴史学者・早乙女静香が、沖縄研究旅行中に遭遇した殺人事件。被害者は徳川家の秘密に関する古文書を秘匿していた!? さらに札幌でも古文書の関係者が謎の死を……。
沖縄―北海道での同時殺人、さらに古文書と、ある童歌の秘密に静香と女子大生・桜川東子が挑む!不可能犯罪と歴史の謎、さらにはなぜかミスコンまで登場、これぞ鯨ミステリーの真骨頂!
書評
鯨ファン必見! サプライズもあるよ!
実際のところ、鯨先生の作品には美女がてんこ盛りです。
本作では、その中でも鯨先生を語るには欠かすことのできない、二大美女――歴史の謎の早乙女静香と、昔話の謎解きにからめたアリバイ崩しの名手、桜川東子――が競演するというだけでもファンにとってはたまらないわけです。
ですが、この二人が競演すると言うことは、内容的にも単なる本格ミステリであるはずもなく、当然のように歴史ミステリ的要素も絡んでくるわけです。
とりあえず、これだけでも鯨ファンにとっては「買い」だと言ってもよいでしょう。
それにしても本作はタイトルに「すべての美人は名探偵である」などというご大層なタイトルがついているだけあって、全編にわたっていかに静香と東子が美しいかの描写に溢れかえっております。
所々には結構なまめかしい描写や、静香と東子が○○○なシーンなどもあり、実にたまりません。でも、ほのぼのとした作風にだまされそうになりますが、鯨先生の作品には結構お色気シーン、多いんですよねぇ。しかも妙に生々しいのが。
さらに、なぜかミスコンに出ることになってしまった静香先生ですが、そのミスコンのやりすぎっぷりも気持ちいい。トップ女優に、今年度、前年度のミス日本まで出場という、もはやツッコむ気にすらならない妄想暴走特急です。
ちなみに、この作品にはその他にも「エッ!!」と驚くあの人達も登場です。
これは読んでのお楽しみです~♪
えらく「美人」にまつわることばかり書いてしまったのですが、多少はミステリとしてのこの作品にも触れなくてはなりません。
静香先生が活躍する「邪馬台国~」「世界の七不思議」シリーズでは、静香先生はいわゆる探偵役ではありません。
天才歴史学者と言われながらも、無名の研究家、宮田の繰り出す通説を覆す歴史の新解釈に唖然とさせられっぱなしの、ちょっと性格のキツイ、けんか腰のワトソン役と言っても過言ではなかったでしょう。
しかし、それでも一般的にみれば充分抜きんでた才能と、実に男前な行動力を持つ彼女です。その彼女は(酒飲みだが)大和撫子で型頭脳明晰な東子さんと組んだことで、言い換えればうまく持ち上げられることで、その行動力を本作品では遺憾なく発揮しています。
そして、その行動力が東子さんの事件分析能力と、静香先生に恋い焦がれる学生、亮太君のまさに手下的活動全般にわたる静香先生への献身と、意外な情報収集能力が一体となり、真相に迫ってゆく様は、非常に気持ちの良いものです。
登場人物それぞれが、不可欠の要素として、自分の役割をきちんとこなすことで物語を作っているのですね。。
ただ、肝心要の謎解きに関しては、歴史の謎についてはちょっとこじつけ要素が強い感がありますし、事件自体の謎解きは、ガチガチの本格ファンなら怒りの感情が湧いてくるやもしれません。……が、良くも悪くも、これが鯨クオリティなんですよね。
確かに最近の鯨ミステリの「謎」の部分に関しては、初期のものに比べて、同じこじつけにしても「パワー」が少し落ち気味のような気はしますが、それでもやはり「鯨先生らしい」と思わせる独特さを維持されているのは凄いと思います。
また、早乙女静香、桜川東子それぞれの続編も読みたいものです。
鯨先生、お願いします。
……ああ、でも、波田煌子シリーズの続編(一応完結しましたが)も出して欲しい。
意外なところで、とんち探偵・一休さんシリーズやマグレ警部の「歌謡曲」ミステリも続編が欲しい……。
やはり鯨先生の作品には、単に「ミステリとして」ではなく、その「鯨ワールド」自体に他の作家さんに真似のできない魅力が潜んでいるようです。
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