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あすなろの詩 (鯨統一郎)
書籍情報
著者 : 鯨統一郎
発行元 : 角川書店
文庫版発行 : 2003.10
伝説の文芸同人誌の復刊を目指す大学文芸部の活動と彼らを襲う惨劇の対比が鮮烈な文庫書き下ろし作品。
こんな人にお薦め
- 青春ミステリが好きなあなた
- サークル活動とかに打ち込んだ経験のあるあなた
- ハッピーエンドなんていらない! なあなた
あらすじ
以下文庫版裏表紙より引用
-
「伝説の文芸誌『あすなろの詩』を復刊しよう」――同じ志のもとに集まった6人の大学生たち。
小説家になることを夢見て、切磋琢磨する日々。
やがて芽生える友情、そして恋。しかし…。
「あすなろの詩」が完成したとき恐るべき惨劇が待ち受けていることを、彼らは知るよしもなかった――。希代のトリックスターが投げかける、かつてない「挑発」!「本格」青春ミステリー!
書評
軽いタッチながらつらい展開です……
鯨作品はどうしてもコミカルタッチな印象が強いもので。
破滅的な展開はより一層つらく感じてしまいます。
本作品は伝説の文芸同人誌「あすなろの詩」を復刊するために集まった大学生達の出会いと部活動の様子が淡々と語られます。
大学受験の試験場で主人公、京四郎と玉岡は夢野久作の「ドグラ・マグラ」をきっかけに知り合います。
そして、入学後玉岡を中心に立ち上げた文芸部「星城文学」と、そこに集まる部員達。
彼らは「あすなろの詩」復刊に向けて日々活動を続けます。
軽いタッチで普通の大学生達の部活動や、そこから生まれる恋愛、人間関係は本当に普通の大学生達の風景です。
それなりに人間関係の衝突などもあるものの、とても陰惨な事件が彼らを待ち受けているとは思えない展開……だったのです。
みんなで協力してやっと完成した「あすなろの詩」
何とも普通に青春な展開。
で、彼らは合宿へ……。
ここからいきなり惨劇の嵐です!
なんだかそれぞれの事件の謎を解くとかそんなヒマもないくらいばったばった死にまくります。
トリックとかよりも「なんで?」ということが先に立ちます。
あんなに青春一直線だったのに。
一応その「なんで?」についてもラストで明らかになりますが、ちょ~~っと納得できない……。
鯨先生はだいたい無茶なトリックも多いのですが、普通に大学生らしく頑張っていた彼らをあんな目に遭わせるネタとしてはあまりにもツライ。
活き活きと活動していた彼らが、事件が始まるやいなやただの事件のための駒のような扱いになってしまうことにちょっと釈然としないのでした。
ミステリですから登場人物がひどい目に遭うのはある意味仕方ないと思うのですが、彼らの日常や若者らしい葛藤がを活き活きと描けていただけに、ひどい目に遭わせるにしても、事件パートももう少し分量をとって丁寧に書いてあげて欲しかったです。
彼らと同じように充実したサークル活動を経験してきた人にとっては、軽いタッチで描かれているにもかかわらず、切ない気持ちが残る作品ではないでしょうか。
キノコはないよ!
キノコは!
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