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とんち探偵一休さん 金閣寺に密室 [ひそかむろ] (鯨統一郎)

書籍情報

著者 : 鯨統一郎
発行元 : 祥伝社
新書版発行 : 2000.4
文庫版発行 : 2002.9

みんな大好き一休さんが足利義満殺害の謎を解く、シリーズ第1作。

新右衛門さんも登場!

こんな人にお薦め

  • 一休さん世代なあなた
  • 鯨先生の歴史新解釈が好きなあなた

あらすじ

以下、新書版裏表紙より引用

応永15年(1408)、初夏。
賢才の誉れ高い建仁寺の小坊主一休に、奇妙な依頼が舞い込んだ。
「足利義満様の死の謎を解いてくだされ」
将軍職を退いた後も権勢を誇り、ついに帝位までも狙った義満が、数日前、金閣寺最上層の究竟頂で、首吊り死体で発見されたという。
現場は完全なる密室。
しかし、義満に自殺の動機はなし…。
一休は能楽者の世阿弥、検使官の新右衛門らの協力を得て推理を開始。
そして辿り着いた仰天の結論とは…。

推理界の新星が日本史の常識を飄々と覆す痛快無比の傑作!書下ろし長編本格歴史推理。

 

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書評

B級っぽさを隠れ蓑にした本格歴史ミステリ

好き好き好き好き好きっ好き♪
愛してる~♪

やっぱり一休さんといえばこれですな。

歴史上の人物でありながら、どう考えてもアニメの印象が強すぎる一休さんを探偵役に据えたミステリです。
新右衛門さんとか、さよちゃんを彷彿とさせる茜とか登場するし、名前は違うけれど和尚さんや小坊主達も登場します。

ここまで来ると、やはり第一印象としてはアニメ版一休さんのパロディ作品のようなイメージを持たれても仕方ありません。
あえて言うと、面白そうではありますが、B級っぽい薫りがそこはかとなく漂いまくりです。

そんなわけで読み始めたこの作品。

なかなか骨太ですぜ。

フィクションとしての一休さんと史実が絶妙に組み合わせられ、見事な歴史新解釈になっています。
ミステリとしての事件は、征夷大将軍を辞し、出家しながら依然として絶大な権力で政を牛耳り続ける足利義満が、こともあろうか厳重な警備がしかれている金閣寺の一室で首つりしたいとして発見され、その死の真相を解明するという、典型的な密室殺人ものです。

それだけなら、単に一休さんという国民的有名人を利用したB級ミステリに終わったかもしれません。
が、この作品はミステリという体裁を利用して、史実とフィクションとしての一休さんのエピソードを巧みにつなぎ合わせて、一つの歴史解釈を見せるところにこそその醍醐味があります。
有名な一休さんのとんち話も、「屏風の虎退治」エピソードが後小松天皇の落胤であると伝えられる一休さんをめぐる陰謀へ立ち向かう手段として使われていたり、「このはしわたるべからず」エピソードにも隠された意味があったりします。
また、義満に冷遇される将軍義持と、義満が溺愛し帝位にまで就かせようとした義嗣の確執も史実の流れに沿って描かれているのですが、ここに天皇の落胤である一休さんが実に自然に物語に関わってきます。

また、観阿弥と共に能楽の大成者として知られる世阿弥も、単に義満の寵愛を受ける能役者としてではなく、楠家の流れを汲む系譜を存分に活用して物語に関わります。
さらには将軍家の臣下である細川頼長や斯波義将の対立も将軍家や朝廷に対する複雑な思惑と共に描かれており、見応えがあります。

足利義満殺人事件という、ショッキングな事件さえも、鯨先生が描く歴史絵巻の一つの構成要素に過ぎないと感じさせるほど、歴史ミステリとして骨太な完成度を持っている作品だと感じます。
にもかかわらず、一休さんという親しみの深いキャラクターを中心に据えることによって、とても読みやすい娯楽作品に仕上がっているところが鯨先生らしくて◎です。

もっとも、最初に述べたように、鯨先生の真価をまだ知らない方にとっては、その一見してのB級具合に敬遠してしまうことも多いことが想像でき、その辺はファンとしては残念なところでありますが。

とにかく未読の方には、そのB級テイストに負けずに、堂々とレジに持って行っていただきたい1冊です。

最後に不満点をちょっと付け足し。

義満公、悪役過ぎw
相変わらず鯨先生の作品はエロシーンになるといきなり生々しすぎw
桔梗屋の登場がなかったのが残念w


以下、ネタバレありです。未読の方はご注意を


なぜか一休さんが修行しているお寺が安国寺ではなくて建仁寺であったり、和尚さんも別人だったり、さよちゃんの代わりに茜だったり、新右衛門さんがずばりアニメのイメージのままで実名で登場しているのに対してなんで? と思ったのですが……。

なるほど、あえて別人としたところにもきちんと理由があったのですね~。

和尚さんは○○だし、実在の和尚さんである外観和尚を使いにくかったのでしょうか。
また、茜ではなく、さよちゃんのままだったら、次作の「謎解き道中」につなげられないしねぇ。

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