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QED ベイカー街の問題 (高田崇史)
書籍情報
著者 : 高田崇史
発行元 : 講談社
新書版発行 : 2000.1 講談社ノベルス
文庫版発行 : 2003.9 講談社文庫
歴史マニアの桑原崇(くわばら たかし)とその後輩棚旗奈々(たなはた なな)の薬剤師コンビが歴史の謎にまつわる事件の謎に迫るシリーズ第三弾。
今回は趣向を変えて、シャーロックホームズの隠された謎に迫る。
QEDシリーズにしては、本格ミステリ成分比率が高い作品。
こんな人にお薦め
- シャーロックホームズが好き(すぎない)あなた?
- 堅苦しそうなQEDシリーズ入門編をお探しのあなた
- シャーロキアンの世界を覗いてみたいあなた
あらすじ
以下文庫版裏表紙より引用
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シャーロキアンのクラブ「ベイカー・ストリート・スモーカーズ」のパーティーに出席した、桑原崇と棚旗奈々がまきこまれた連続殺人事件。
しかも現場にはダイイング・メッセージが。現実の事件と「ホームズ譚」の謎が交錯する中、崇の推理がたどりついた真犯人とホームズの秘密とは?
好調シリーズ第3弾!
書評
やはりマニアはコワイのです
高田先生のQEDシリーズも第三作。
百人一首、六歌仙と日本古典をテーマに取り上げてきたこのシリーズですが、今回はシャーロックホームズを主題に持ってこられました。
言うまでもなく、シャーロックホームズ自体が完全に虚構の物語ですので、綿密な歴史考証が売りのシリーズなのに大丈夫かな? と思って読み始めました。
結果は……う~ん、判断がつきかねます。
まず、歴史考証に関してはやはり薄くならざるを得ません。
が、世界中に生息するシャーロキアン達が創りあげてきた、膨大なホームズ研究の存在が意外に深い分析を可能としてくれた感があります。
とは言え、やはり元が虚構をいじくる遊び(というと怒られるかもしれませんが)なので、せっかくのタタルさんの解釈も、まあそんなのもありかな? という感想に留まりました。
というか、意外でなさ過ぎたように思ってしまうのは私だけ?
面白い解釈だけど、ミステリで言えば「どんでん返し無しの直球(すぎる)勝負」という感じでしょうか。
その代わり、ネタ的に取っつきやすいのも事実。
QEDシリーズをなんだか小難しそうという理由で敬遠している人が試すにはうってつけだと言えるでしょう。
また、歴史考証が浅い分、現実の事件の謎解きの比重が相対的にアップしているのも、普通のミステリファンにはより取っつきやすくなっていると言えるかもしれません。
事件は奈々の大学時代の先輩、緑川友紀子に誘われて参加したシャーロキアンの集まり「ベイカー・ストリート・スモーカーズ」のパーティで起こります。
事件が起こる前から交わされるシャーロキアン同士の(普通に考えれば楽しいとは思えない)論争。
そんなシャーロキアン達が演じる「まだらの紐」の芝居中、控え室で起こった殺人事件。
やたらに血がぶちまけられたような現場、被害者が握っていたメモの切れ端、そして少し前に自殺していたスモーカーズメンバー、築地夏代とそのアナグラムである辻名季津世の名を持つ幽霊会員の存在。
なかなかに本格的。
さらに続いて起こった事件では、ホームズファンにはおなじみの「躍る人形」の暗号が絡んできます。
まあ、ちょっと動機が「アレ」でしたが、それでもシャーロキアンを中心に据えた事件として、それなりにまとまっていたと思います。
とりあえず、シャーロキアンたるもの、悪事を憎む正義の人でいていただきたいと切に願いますw
というわけで、普通にミステリとして楽しめる本作品。
普通にオススメできます。
だけど、あのコテコテの歴史分析がないとちょっぴり物足りなさを感じるワタクシは、QEDシリーズにハマリかけているのかもしれませんね?
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