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千葉千波の事件日記 試験に出るパズル (高田崇史)

書籍情報

著者 : 高田崇史
発行元 : 講談社
新書本発行 : 2001.9
文庫版発行 : 2004.8

収録作品

  1. 《四月》9番ボールをコーナーへ
  2. 《五月》My Fair Rainy Day
  3. 《六月》クリスマスは特別な日
  4. 《七月》誰かがカレーを焦がした
  5. 《八月》夏休み、または避暑地の怪

こんな人にお薦め

  • パズルはじっくり考えるタイプのあなた
  • 分かり易い設定で気軽に楽しみたいあなた
  • 森博嗣先生のファンなあなた

あらすじ

文庫本裏表紙より引用

眉目秀麗にして頭脳明晰の天才高校生・千葉千波くんが、従兄弟で浪人生の“八丁堀”たちとともに難問、怪事件を鮮やかに解き明かす。

たっぷり頭の体操が楽しめる上質の論理パズル短編5本に、「解答集」、森博嗣氏による解説までてんこ盛り!

ご存じ『QED』の高田崇史が送る新シリーズ第1弾、待望の文庫化。

 

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書評

気軽に読めるパズル小説

最近はクイズ番組が流行である。

またなぜかゲームにおいても脳トレものがたくさん発売されてヒットしているいる状況である。
みんな本格的な勉強はしたくないが、ちょっと頭を使うのは大好きみたいである。

もちろんこのような兆候は今に始まったことではないし、テレビやゲームに限ったことでもない。
「本」の世界においても同様である。
元祖ともいうべき「頭の体操」をはじめとして、少し大きめの本屋さんを眺めてみれば、クイズ本やパズル本は当然として、けっこう本格的な学問的知識を初心者向けに簡単に解説したような本まで、実にたくさん並んでいる。

そして、推理小説。
その中でもいわゆる「本格」といわれるジャンルのものは一種似通った要素を持っているなと思うわけですが、この本はそれをさらにパズル本寄りにしたような感じな訳です。

具体的には各話の中に、そのものずばりなパズル問題が書かれていたり、事件解決の過程が思いっきりパズルだったり、事件の設定から解決までがそのまんまパズルであったりとか。

小説を文学的に見てあーだこーだと批評することしかできない人には正直あんまりお勧めできないかも知れないです。
少なくとも普通の本格推理小説を読んで「こんなのただのパズルじゃないか! これならストーリーなんていらないぞ!」などとのたまってしまう人には絶対にお勧めできないですねぇ。

……いや?

もしかすると、そのあまりの潔いパズル本っぷりにかえって気に入ってもらえるかも??

わたしとしては、とっても楽しめました。
最近の本格ものは、とにかく目新しいトリック、もしくはどんでん返しを追及するあまり、純粋に推理する楽しみを味わえないものが多いように思います。
もちろんそれが悪いということではないのですが、なんというか、普通に本の中にある手がかりから論理的に推理を組み立てていく、という楽しみを味わいたくなるときもあるのです。

そんなときにはこの本は良いような気がするのです。日常会話として千波君から出題されるパズルに本筋の事件自体もパズル的。全編を通して頭の体操を楽しみながら読み進めることができます。
かといって、パズル的な謎を解いたらそれで終わりというパターンだけでもなく、ちょっと控えめに付け加えられたかのようなどんでん返しもありで、その辺に高田先生のセンスが光っているような気がします。

その分、登場人物の設定などは漫画的にありきたりな感じはします。
千波君は頭脳明晰の美少年であり、楽器もできておまけに(これまた漫画的な)大金持ち。慎之介は大柄でちょっと粗暴系のキャラ(探偵学園Qでいうキンタみたいなw)。そして語り役の八丁堀(仮名)はバカではないがいわゆる普通系。

でも、それがいい。
安心して楽しめるのです。

陰惨な事件を感じさせる雰囲気は微塵もなく、これは殺人はないなと断言できてしまう有様。これって意外とあるようでないような。(いわゆる「日常の事件」系の小説でも意外と殺人事件とかは起こっていますしね)
そして、ワンパターンのように繰り返される、冒頭の八丁堀の理論的(?)な自己弁護(現実逃避)とそれに対する慎之介のツッコミも楽しい。

そんなわけで、ここまでほとんど褒め殺し状態で来ましたが、難点がないわけでもありません。
一番大きな難点は「パズルの難易度が高い!」ということなのです。

え?
お前がアホなだけじゃあって?

……まあ、あえて否定はいたしませんが、ちょっと言い換えると、普通に本を読みながら頭の中だけで考えられるレベルではないということなんです。

むろん西之園萌絵嬢あたりの頭脳の持ち主ならばすぐに答えが出そうなものですが、たぶん一般的には別の紙にいろいろメモを取りながら必死に考えて答えが出るかも知れない、というくらいのレベルの問題がほとんどであるように思われます。

これは「きちんと机についてじっくり読書派」の方には手応えがあって良いのかも知れませんが、わたしのように電車に乗って読む、寝ながら読む、呑みながら読むというタイプの人間にとってはなかなかツライものがあります。

「頭の体操」に例えると1分くらい考えてわからなければすぐに答えを読んで次の問題にいってしまう、というその本の楽しみを半減させるような楽しみ方しかできないのです。
もう少しその場で、頭の中だけで考えられるタイプのパズルももう少し混ぜ込んでいただけると、より一層楽しめたような気がします。必ずしも難易度自体を下げろというのではなく、その場で考えられるパズルでも難易度の高いものもあると思いますし。

それにしても、八丁堀に慎之介。
浪人生のようですが、彼らの将来が心配です。
決して頭は悪くはないようなのですが。

最後に、先程「西之園萌絵」嬢を引き合いに出しましたが、この本の解説は彼女の生みの親、森博嗣先生。さすがに普通の解説ではありません。森先生のファンの方も必読の一冊と言えるでしょう?

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