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QED 六歌仙の暗号 (高田崇史)
書籍情報
著者 : 高田崇史
発行元 : 講談社
新書版発行 : 1999.5 講談社ノベルス
文庫版発行 : 2003.3 講談社文庫
歴史マニアの桑原崇(くわばら たかし)とその後輩棚旗奈々(たなはた なな)の薬剤師コンビが歴史の謎にまつわる事件の謎に迫るシリーズ第二弾。
今回は七福神と六歌仙に隠された真実と現代の殺人事件が見事に融合。
こんな人にお薦め
- 歴史ミステリが好きなあなた
- 古文は苦手だけど歴史には浪漫を感じるあなた
あらすじ
以下文庫版裏表紙より転載
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「七福神は呪われている」
明邦大学を震撼させた連続怪死事件以来、その研究はタブーとなっていた。しかし、棚旗奈々(たなはたなな)の後輩・貴子は兄の遺志を継ぎ、論文を完成させようとする。
そして新たな事件が!?ご存知、桑原崇(くわばらたかし)が歴史の闇に隠された「七福神」と「六歌仙」の謎を解き明かす。
大人気シリーズ第2弾!
書評
今回は古文が苦手なあなたもダイジョーブ!
さて、高田先生のメインシリーズである「QED」シリーズ第二弾は六歌仙と七福神の謎に挑戦です。
ミステリ小説の書評なのに、その冒頭に事件の内容ではなく、「六歌仙」やら「七福神」やらが出てくるところにこの本の性格が凝縮されています。
前作「百人一首の呪」の書評を読んでいただければわかりますが、前作は完全に事件そっちのけで、百人一首に隠された謎に焦点が当たり続けます。
そして大きな問題点と言えたのが、さんざん頑張って解き明かした百人一首の謎が、肝心の事件解決にあんまり関係ない、という点でした。
「面白かったけどミステリとしては……」
「歴史ミステリは好きだけど、ちょっとマニアックすぎて……」
前作を読んでそんな感想を持ったあなた。
朗報です。
本作「六歌仙の暗号」は買いです!
まず、事件のウエイトが「ミステリ」と言えるくらいには重くなっています。
「七福神は呪われている」
そんな言葉を残して事故死した当時学生の斎藤健昇。
そして、そんな兄の言葉に導かれるようにして、タブーとされる七福神の謎にアプローチする妹、斎藤貴子。
そんな中、大学の研究室で起こる、大学教授の不可解な死、その謎を追う桑原祟と棚旗奈々を尻目に、さらにはその事件の発見者が殺され、ついには貴子にも魔の手が……。
見事に本格ミステリ仕立ての展開です。
しかも、今回は歴史的要素が「七福神」から「六歌仙」に展開していきながら、その流れに合わせて事件も展開してゆくため、歴史講義がミステリの流れを止めません。
そして、結末にいたるまで「今」の事件と「七福神」「六歌仙」の謎は密接に繋がっています。
そういう意味で、良し悪しは別として見事に本格ミステリになった本作です。
次の「買い」要素は歴史ミステリ要素の敷居が低くなったということでしょう。
といっても謎が陳腐になったということではありません。
ただ、前作ではいきなり専門課程の講義が始まっていたのが、本作では一般教養課程を経て専門課程へ進んでいくといったイメージでしょうか?
前作では、そもそも百人一首の歌を理解できている人でないと楽しみにくい造りだったのですが、本作では七福神というものを一応知っている人、六歌仙――在原業平や小野小町など――を一応知っていて、当時の歴史の流れを中学生レベルくらいで把握している人なら、その先のマニアックな世界には崇さんが優しく導いてくれます。
結果として、物語、ミステリとしては前作を遥かに凌ぐものになったとわたしは思います。
確かに、ミステリ部分だけを抽出すると、謎としてはもう一つ物足りなかったり、動機とか結末が歴史ミステリ部分との関連を意識するあまり、ちょっと無理があるように感じられたりもいたしますが、歴史ミステリ部分の比類無き面白さの前には瑣末事です。
そんなわけで、お薦めの逸品でございますよ?
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