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解体諸因 (西澤保彦)

書籍情報

著者 : 西澤保彦
発行元 : 講談社
単行本(ソフトカバー)発行 : 1995.1
文庫版発行 : 1997.12

匠千暁シリーズの第1作にして、西澤先生のデビュー作。
広義のバラバラ殺人事件ばかりを集めた異色の短編集。

収録作品

  1. 第一因 解体迅速
  2. 第二因 解体信条
  3. 第三因 解体昇降
  4. 第四因 解体譲渡
  5. 第五因 解体守護
  6. 第六因 解体出途
  7. 第七因 解体肖像
  8. 第八因 解体照応 推理劇 『スライド殺人事件』
  9. 最終因 解体順路

こんな人にお薦め

  • バラバラ殺人こそ本格ミステリのロマンだと信じるあなた
  • 安楽椅子探偵スタイルが好きなあなた
  • 謎解きはちょっと無理があるくらいがちょうど良いあなた

あらすじ

以下 文庫版裏表紙より引用

6つの箱に分けられた男。
7つの首が順繰りにすげ替えられた連続殺人。
エレベーターで16秒間に解体されたOL。
34個に切り刻まれた主婦。
トリックのかぎりを尽くした9つのバラバラ殺人事件にニューヒーロー・匠千暁(たくみちあき)が挑む傑作短編集。

新本格推理に大きな衝撃を与えた西澤ミステリー、待望の文庫化第1弾。

 

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書評

ああ……もう腹一杯です。バラバラは。

これでもかと切り刻まれます。
最高一人が34個に切り分けられます。
描写があっさりしているのが救いです。
二階堂黎人先生張りの描写でこの作品を書いてしまったら、ちょっと発売できないかも。わたしなんて、この作品を読んでからバラバラ殺人の夢を見るようになってしまったじゃありませんか。
何とかしてくださいw

そうはいっても、ミステリマニアならば「バラバラ殺人」と聞くとどこか闘志が湧いてくるのも事実。
と言うわけで内容ですが。

これは匠千暁(タック)シリーズなんですね。
わたしは今回再読なのですが、タックシリーズだという印象は完全に忘れ去っていました。それほど人物のイメージがのちのシリーズのそれと異なっています。まあ、これはデビュー作ですからそこを捕まえてどうこう言うつもりはありませんが。
それでも、ボアン先輩はボアン先輩でしたのでひと安心です。

また、今作はタカチは第五因1作のみの登場で、ウサコも登場しませんし、タックとボアン先輩の知り合い同士という設定はあるものの、作中では顔を合わすことすらありません。

それでも、タックシリーズですから謎解きは、良く言えば安楽椅子探偵スタイル、悪くいえば「妄想が暴走して解決」スタイルです。

今回は主に「バラバラにした理由」を中心的な謎として物語が展開します。さすがに、事件自体が非現実的な香り漂うものが多いので、謎もかなり無茶な感じのものが多いです。
しかし、この妄想力こそがタックシリーズの、ひいては西澤先生の魅力なのでしょう。
そして、話が続くにつれ、なんだか妙につながっている感じがするのですが、最終因で見事に話をつなげてみせます。

何らかの仕掛けは予想していたので、意表を突かれたという感じはありませんでしたが、強引なまでのパワーを感じました。綺麗な論理というよりは、力尽くでもパズルのピースをはめ込んでやる、という勢いを感じましたね。

この作品では、個々の短編における細部の矛盾などをつつく必要性が、そもそもないと思いますのでやめておきますが、全体的に見たときに、第八因の長さに少しだれてしまいました。
この第八因はシナリオ形式で綴られるのですが、このような形式は本来、小説として読ませるのに向いた形だとは思いません。
もちろん、ストーリー上の必然性や、読者に与える独特の印象などの効果は否定しませんが、いってみればほとんど台詞のみが語られるという単調さがあるのは事実です。さらに本作の場合、起こる事件までが単調な繰り返しであり、またその他の話に比べて極端に長いこともあり、ちょっと読むのが大変でした。

それにしても西澤先生はエロですね。

別に性交の描写があるわけではないのですが、生々しい。
本作のバラバラ殺人がもう少し生々しく描かれていれば、デビュー作にして立派なエログロ作家となられたことでしょう。

このような部分も含んで思うのは、人のどろどろした部分をストレートに書かれる作家さんだなということです。結構後味の悪い作品も多いです。(この本に限らず)
なのに、このタックシリーズも全体的にはほのぼのした雰囲気ですし、チョーモンインシリーズもあのかわいらしいイラストですから、その雰囲気と物語のラストの後味の悪さのギャップにちょっとついていけないことはあります。

なんにせよ、この作品は西澤先生の人格から作風までを語る上で欠かせない1冊であることには変わりないようです。

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