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笑わない数学者 MATHEMATICAL GOODBYE (森博嗣)

書籍情報

著者 : 森博嗣
発行元 : 講談社
単行本発行 : 1996.9
文庫版発行 : 1999.7

犀川助教授と西之園萌絵のコンビが活躍するS&Mシリーズ第3弾。

こんな人にお薦め

  • 多くの謎がちりばめられた作品が好みのあなた
  • 「館」の見取り図とかが載っているとなぜか嬉しいあなた
  • 犀川先生萌えなあなた

あらすじ

以下 文庫版背表紙より引用

偉大な数学者、天王寺翔蔵博士の住む「三ツ星館」。
そこで開かれたパーティの席上、博士は庭にある大きなオリオン像を消してみせた。
一夜あけて、再びオリオン像が現れた時、2つの死体が発見され……。

犀川助教授と西之園萌絵の理系師弟コンビが館の謎と殺人事件の真相を探る。
超絶の森ミステリィ第3弾。

 

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書評

美しい謎に彩られた良作

S&Mシリーズの第3弾ですが、ここまでは見事に館ものです。しかも今回は片山基生なる建築家が建造した、オリオン座をモチーフにしたと思われる「三ツ星館」での殺人……って、なんだか「館シリーズ」を読んでいる気がしてきました。

さらに設定的にも、この山奥の洋館で隠遁生活を送る天才数学者と、そこでのパーティに招かれてきた一族たちに、たまたま縁があって参加している我らが名探偵といった感じですので、土台部分としては今までの三作の内、もっともオーソドックスと言えるでしょう。

ただ、森先生はやっぱり飾り付けのセンスがその辺の作家さんとは一線を画しておられます。
館も普通なら蔦の絡まる洋館にでもしないとミステリの雰囲気が出しにくいところですが、森先生の場合、あくまでも近代建築なんですね。

もちろん館ものの中には、単なる古い洋館だけではなく、かなりトリッキーな建物も数多く出てきますし、近代的(というより近未来的?)な建物も多く存在します。
が、その多くはいかにも非現実的な香り漂うもので、まさに事件の舞台として建てられたとしか思えない奇妙なものが乱立しています。(それが悪いといっているわけではありません)

この点、今作の三ツ星館も、同じ建物を別の作家が扱えば、非現実のミステリ洋建造物としてとらえられてもおかしくないようなものですが、森先生が書くと、実際にある建物のような印象を持ってしまうから不思議です。

これは単に建築に関する専門用語を使って説明しているからではなくて、有名な建築家が建てたその建物のそこに流れる思想の部分にまできちんと言及されているからでしょう。

ところで、この作品については他の書評などを拝見すると、「森ミステリ一番の傑作だ」という声も多く聞く反面、「こりゃだみだ」的な評価も良くききます。

なぜでしょう?
私が思うのは、この作品は上で述べたように、一見したところの体裁は、もうがちがちの本格ミステリなのですが、それにも関わらず、メイントリックがちょっと弱いからだろうということです。

要するに、この作品に必要以上の低評価を与えている人は、おそらく気合いの入った謎=トリックを期待されていたのではないでしょうか?
もちろんその気持ちもわかりますが。(わたしもそうでしたから)

でも、わたしの場合、この作品を読み進める内に、このメイントリックの概略は想像つきながらも、ずっとワクワクしたまま読み切ってしまいました。
それはこの物語が、事件とは直接関係はないにせよ、数々の「謎」で美しく彩られているからです。
オリオン像消失の謎、オリオン像の向きの謎、三ツ星館はなにを伝えようとしているのかの謎、そして、ビリヤードの玉の問題に天王寺翔蔵博士と犀川先生の謎かけのような会話。

更に森先生によれば「メイントリックはわざと簡単にした」とのこと!!
「トリックに気づいた人が、一番引っかかった人である、という逆トリック」とのこと!!

わたし自身はその点については、初読時はあっさり読み飛ばしてしまっておりました。メイントリックの謎解きを見て、すっきり気分で終了でした。
もっともこの部分については、本の中でその答えが明確にされているわけではありませんし、(手がかりはきちんと示しているそうですが)パズルの最後のひとピースまできっちりはまりきらないというコテコテの本格の鬼のような方には、実はお勧めできないのかも知れません。
が、それでも少し心にゆとりを持って臨んでいただければきっと楽しめるはず。

お勧めです。

それでは、ネタバレ前に今回の見所を……
西之園嬢の親友二人に、彼女のことをどうするつもりなのか詰め寄られてパニクる犀川先生。萌絵嬢より萌えキャラかも知れん……。


以下、ネタバレありです。未読の方はご注意を


上で、メイントリックが弱いことは申し上げましたが、それに絡むオリオン像消失の謎について、作中では孤高の天才数学者が仕掛けた天才的な謎、的な扱いがされています。
実際その答えにたどり着いた犀川先生を、天王寺博士はあっさりとその能力を認めてしまうのですから、やはり天才的レベルの謎として設定されたのだろう、と素直に読んでいると思ってしまいます。

森先生がおっしゃるように、わざと簡単なトリックにしたのなら、このオリオン像の謎も、天才数学者が身内の子どもたちを驚かすために作った「大がかりなお遊び」くらいの扱いにしておけばもっとしっくりきたように思います。

ただ、さんざん簡単なトリックといっておいて何ですが、鈴木昇君が撃たれたシーン。ここがあったために、わたしはトリックの大筋はつかめているつもりなのに、確信ににまでは発展しないという状態で解決編を迎えました。
細かい点ですが、なかなか考えられているなぁと思いました。

「すぐにトリックわかっちゃった」という多くの方は、こういうところも含めて真犯人を論理的に指摘できるレベルまで「わかっちゃった」のでしょうか?
まさか、部屋自体が回っていた、ということがわかっただけでトリックわかった~とおっしゃっているのではないと……信じたいところですが。

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