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人形式モナリザ Shape of Things Human (森博嗣)

書籍情報

著者 : 森博嗣
発行元 : 講談社
単行本発行 : 1999.9 講談社ノベルス
文庫版発行 : 2002.11 講談社文庫

瀬在丸紅子・保呂草潤平・小鳥遊練無・香具山紫子の4人組が事件に挑むVシリーズ第2作。

本作から紅子さんの元夫の現愛人、祖父江七夏さんも登場。

こんな人にお薦め

  • シリーズを通してつながりのある構成が好きなあなた
  • ミステリには入り組んだ人間関係が必要だというあなた
  • 関西弁=がさつ。でもそれがいい!と言えるあなた

あらすじ

以下文庫版裏表紙より引用

蓼科に建つ私設博物館「人形の館」に常設されたステージで衆人環視の中、「乙女文楽」演者が謎の死を遂げた。

二年前に不可解な死に方をした悪魔崇拝者。
その未亡人が語る「神の白い手」。

美しい避暑地で起こった白昼夢のような事件に瀬在丸紅子と保呂草潤平ら阿漕荘の面々が対峙する。
大人気Vシリーズ第2弾。

 

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書評

この小説の本当の主題は?

保呂草、紅子、練ちゃん、しこさんご一行の今回の舞台は長野県蓼科の練ちゃんのバイト先であるペンションと「人形の館」と呼ばれる私設博物館です。

その博物館で起こった事件は、女性のみが演じる乙女文楽の演者、岩崎麻里亜が舞台上で服毒して倒れ、麻里亜の祖母で乙女文楽の師でもある岩崎雅代が舞台裏のエレベーターで上がったところにある、舞台上方のスペースで刺殺されていたというものです。
いつもの「一種の密室殺人」であります。
過去の岩崎家で起こった悲劇も物語に絡み、さらなる殺人も起こってしまったりします。

が、どうにもこうにも事件自体は小粒な感じが否めません。
複数の殺人があるのに小粒というのもなんなのですが。

大枠のトリック自体はそれほど斬新でもなく、見当がつく読者の方も多いように思います。
その代わり、というより、やっぱりというべきか、そんな小粒な事件の裏にはさらなる仕掛けが施されていました。
ただし、その仕掛けはシリーズ初読時でないと楽しめない趣向なのでご注意を。

もう一つは、5年前に死亡した彫刻家であり、岩崎雅代の愛人であった江尻駿火が残した多くの人形の中に隠された、「モナリザ」の名を冠する作品の謎。
でも、これもちょっと分かり易すぎたような……。

また、上記のようにミステリとしては比較的単純な造りであるのに、(シリーズ主要キャラ以外の)人間関係がややこしい。
いや、たいして複雑というわけではないのですが、あまりそれぞれの人物についての描写がないのですよ。
岩崎雅代の夫・達治と愛人江尻駿火。そしてそれぞれとの間にもうけられた子ども達、孫達、その家族。
それぞれの説明はあるのですが、保呂草さん達との接触が全体的に少なく、日常もほとんど描かれないために、それぞれの性格の印象が残らないんですよね。

保呂草さん達、シリーズ主要キャラクタの印象がピカイチなだけに、それ以外のキャラ達がとても記号的に感じられてしまったといいますか……。

そんなわけで、わたしは本作に関して、ミステリとしては少々退屈さを感じつつの再読と相成ったわけですが、その代わりに紅子さんの元夫、林さんの現愛人(子供も産んだ)祖父江七夏さんが降臨し、紅子さんと全編にわたってのバトルが繰り広げられます。

ええ……もう、実に女性らしい、水面下でのネチネチバトルが延々と……。

わたしはというと、そんなネチネチバトルは触らぬ神に祟りなしとばかりにかる~く通り過ぎ、相変わらずしこさんに注目です。
わたしの中ではアンタが主役です。しこさん。
前作「黒猫の三角」書評でも書きましたが、やはり良くも悪くも天才的、超人的な方向の変人が多い森ワールドの中において、庶民的、俗物的な方向の変人であるしこさんは輝いています。
しかも、一見やっぱり変人なしこさんの視点は、実はホントに常識的で素直な視点なんですね。
当たり前に、驚き、哀しみ、喜び、酔いつぶれる。
そのさまは現実の人間と照らし合わせると、逆に誇張されたとも言えるほどの常識さであり、素直さなのです。
かなりがさつではありますが。

森先生の作風ではないかも知れませんが、しこさん主役の短編集なんかが読みたいところです。

何はともあれ、本作でようやくVシリーズの舞台装置が整った感じです。
S&Mシリーズに比べ、シリーズ全体でひとつの流れを構成する意図が強いような気がします。
その意味で、このVシリーズは、特に順番に読むべきシリーズと言えるでしょう。


 

以下、ネタバレありです。未読の方はご注意を


最後の一行。

どうなんでしょう?

私は正直なところ、本作の事件部分に対してはそれほど入り込めなかったクチなので、実は初読時はあっさりスルーしてしまってました。

漫然と読んでるのが悪い、と言われれば全くその通りなのですが、この手のどんでん返しは読者にひとつの世界、ひとつの結末を強く印象づけていて初めて大きな効果を発揮する類のものだと思います。

森先生にいわせれば、わかる人だけわかればいい、なんて言われそうではありますが……。

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