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名探偵 木更津悠也 (麻耶雄嵩)
書籍情報
著者 : 麻耶雄嵩
発行元 : 光文社
新書本発行 : 2004.5
文庫版発行 : 2007.5
収録作品
- 白幽霊
- 禁区
- 交換殺人
- 時間外返却
こんな人にお薦め
- イヤな寒さを味わいたいあなた
- 緻密な論理より短編らしいダイナミックな謎解きがお好みのあなた
- 「翼ある闇」を読んだあなた
あらすじ
新書版裏表紙より引用
-
京都某所の古めかしい洋館・戸梶邸で、資産家が刺殺された…。
柵もあってしぶしぶ依頼を引き受けた名探偵・木更津悠也を待ち受けていたのは、ひと癖もふた癖もある関係者たちの鉄壁のアリバイ。四角く切り取られた犯行現場のカーテンが意味するものは?
一同を集めて事件の真相を看破しようとする木更津だが…。(「白幽霊」)京都の街に出没する白い幽霊に導かれるように事件は起こる。
本格推理の極北4編。名探偵・木更津悠也の活躍を、とくにご堪能あれ。
書評
「極北」寒いよ~
う~む。
新書版裏表紙には「本格推理の極北」とあり、しかしタイトルはど真ん中のストレート「名探偵 木更津悠也」であります。
買う前に悩んでしまいました。
単に優れた作品を指すのに「極北」は使わないだろう……けど、タイトルはどう見ても直球勝負の本格ミステリだし……。
結果「何かありそうだ」と思って購入したわけですが。
なるほど。
作品中にはワトソン役の香月の、過剰なまでの「名探偵 木更津悠也」への憧れ、「名探偵とはかくあるべき」という心中がちりばめられています。
なんだかなぁ……と思って、第一作の白幽霊の佳境で、まず第一の「あれ?」が脳裏に浮かびました。
これはもしかして、と読み進める内に、第二、第三の「あれ?」が浮かび、それと同時にいや~な寒さを肌で感じました。
まさに極北w
こんなにかわいそうな名探偵は見たことがありません。
詳しくは読んでください。
ただ、一作一作の内容は、幽霊というキーワードにくくられはするものの、いわゆるオーソドックスな短編本格作品です。
あえて、短編と付け加えたのは、本格ものの中でも短編によくありがちな「多少無理があっても、印象の強いワンアイデアで勝負」的作品が多かったからです。
その辺いわゆる本格好きの方からすると「論理的でないからダメだ」という批判を受けがちなところなのですが、わたしはアクロバティックな展開を短編ならではの強引さで無理矢理まとめる、あのスピード感も結構好きですので、素直に楽しめました。
もっとアクロバティックでもよかったくらいです。
そんなわけで、わたし自身はこの作品単体として、なかなか楽しめたのですが、物語のキーワードとして存在する「幽霊」、そこにこだわって読んでいた人にとってはちょっと不満の残る終わり方であろうと察することが出来ます。
ちなみに、読後、ネット上でこの作品の書評を色々読んでおりましたら、麻耶先生の「翼ある闇」を先に読んでおくともっと楽しめます! との記載が散見されました。
実はわたしは「翼ある闇」は読んだことがあったのですが、登場人物の名前は「メルカトル鮎」しか覚えていない、という状態でしたので、それとつながった世界観だと言うことに全く気付くことなく読了してしまっており、これらの書評を見るやすぐに「翼ある闇」を開いてみましたら……な~~~るほど。納得です。これは違う楽しみ方が出来るな、と思いました。
でも、あえて言うなら、わたしはこの作品を先に読んでも充分楽しめると思います。
そもそも仕掛けに気付かなければお話しにならないのですが、そこに気付けば、わたしが感じたようないや~な寒さをみなさんも感じることが出来るのではないかと思います。
これは逆に「翼ある闇」を先に読んで(内容を覚えて)いると、感じられない感覚かもしれません。
麻耶作品未読の方は、この作品を読んでから、「翼ある闇」から始まる麻耶ワールドを堪能したのちに、またこの作品に戻って、にやにやしながら再読する、というのもよいかもしれませんよ?
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