Daydream of Eudial
サイト紹介
- Daydream of Eudial
- ジャンル : ゲーム / MMORPG / 二次創作 / Aion
ユーディアルさんが運営するサイトです。
MMORPGでのご自身やギルドメンバー達の冒険を下敷きにした物語を書いていらっしゃいます。
正味の冒険譚もあれば、ゲームのマニュアル的創作もあります。
取り扱いゲームタイトルは「Rappelz」「R2」と現在連載中の「Aion」です。
プレイ経験のある方、ゲームの雰囲気を知りたい方にオススメです。
収録作品 2009.8.31現在
- 魔族の見上げる空 (Aion創作)
- 序国勃興記 (R2創作)
- デーヴァの四姉妹 (Rappelz創作)
立ち読み
魔族の見上げる空
作者による前文
『The Tower of AION』は、管理人が現在プレイ中のMMORPGで、間もなくOBテストが実施されます。
ゲーム自体は典型的なファンタジー系のMMORPGです。 完成型をうたっているだけあって細部にこだわって作られています。 世界設定が明確で、目標も対抗種族との抗争とわかりやすくなっています。
二次創作話の方は、『四姉妹』ではマニュアル的、『序国』では戦争を中心に書いていたので、今回は人間関係を核につづっていきたいと考えています。
キャラクターを貸してくださるみなさま、読んでくださるみなさま、しばらくまたユーディアルの話におつきあいください。
序章
序 章
黒い羽根……
ごく希に、イスハルゲンでは雪や雨のように空から黒い羽根が降る……
黒い羽根が降ると決まって村の子どもたちは、「ディーヴァ様のお守りー」と先を争うように羽根へと向かって駆けてゆき、村の大人達は頭を垂れてディーヴァ様に感謝を意を示す。
AIONの神々とともに、龍族や天族からこの地を守る黒き翼のディーヴァ達は、人々の信仰の対象なのである。
母が亡くなったあの日にも、窓の外には黒い羽根が舞っていた。
病にむしばまれ、そこだけが生活の場となった麦わらを敷き詰めたベットの上から、風でカタカタと鳴る窓ににじり寄るように身を乗り出して「あなた、きてくれたのね……」と、つぶやいて逝った母。
その母の口癖は、「あなたのお父様はディーヴァ様になったのよ……」であった。
私が生まれる直前に覚醒したという父の姿を私は知らない。
覚醒後、父は一度もイスハルゲンに戻らなかったからだ。
AIONの塔が崩壊した後のアトレイアは、人間が生きるには辛い世界へと変わったという。
働き手であった父がディーヴァとなって家を去り、女一人で子どもを養うのは大きな負担であったのだろう。
いつしかやさしかった母の顔からは笑顔が消え、床につく回数とため息が増えるのを見ながら私は育った。
ディーヴァ様を輩出した家ということで村から供出される食べ物がなければ、とてもでなければ暮らしてはいけなかったであろう。
けれども、幼かった私には父ディーヴァへの感謝の念はなかった。
月ごとに、長老達が供出した食料を持ってくる時のねたましい顔は、子どもでも十分にいやなものだったし、母の病が重くなり供出物が増えるにしたがって大人達ばかりか幼なじみ達も私と距離をとるようになっていったからだ。
村人達へのうらみはない。
どれほどイスハルゲンで暮らすことがたいへんであるかは、身をもって知っていたからだ。
そんな状況を、病床にあるとはいえ母も十分にわかっていたであろうに、母は決して父への恨み言だけはもらさなかった。
苦しく、つらく、寂しくとも父のことを語る時だけは、いつも母は笑顔だった。
だからこそ、私は思わずにはいられなかった。
世界が救えるディーヴァ様ならどうして母様や私を助けてくれなかったのと……
一時でもいいから帰ってきてくれなかったのと……
母が逝き、容姿の変貌が進み始めた私に、村長が食料の供出の停止を告げにきた。
ディーヴァ様を輩出した家の主もいなくなり、村としての責務は果たしたということなのだろう。
とうの昔に畑と家畜を手放していた私には、村の誰かと結婚して子をなすか、村から出て行くしか残された道はなかった。
幼なじみの多くがすでに嫁入りし、幾人かは子をなしていたが、私のようにツノまで生えてくるような変貌の大きな娘をもらおうというものはそうはいなかった。
深い山間にライカン達から隠れるように開墾された小さな村。
軽く走っても半刻かからずに村の端まで行き着けるであろう小さな空間。
村外れの墓地で母の墓を背に、生まれ育った小さな世界、私にとっての世界の全てを振り返る。
もはや、そこには私の帰る場所はないのだった。
畑で働く顔見知りの農夫も、野を駆ける子どもたちも誰一人として私に気をとめない。
過去を振り切るように勢いよく村に背を向け、私の全財産が詰まった小さな革袋を肩にかけ、村の境界へと歩み出す。
ふと見上げた暗いイスハルゲンの空から、一枚の黒い羽根がゆっくりと弧を描くように舞い落ちてくる。
もう二度と振り返らずに村を後にする私の背で、黒い羽根がそっと母の墓に重なった……
いかがでしたか?
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寸評 - 魔族の見上げる空
一見すると似たような雰囲気を持つファンタジー系MMORPGの世界を、愛情をもって自分の創作世界へ取り込んでいるのが好印象です。
登場人物も、作者自身や実在する知り合いのプレイヤーの方を中心とするものの、いわゆるNPCも活き活きと書かれています。
ただし、身の回りの風景描写などは比較的丁寧に書かれている印象はあるものの、それ以前の世界観の記述があくまでもそのゲームをプレイした方向けとなっているので、未プレイの方にお薦めしにくいのがもったいないです。