TOPページへ ミステリ書評 作者リストへ ミステリ書評 作品リストへ PCゲームレビュー リストへ 厳選リンク集へ BBS ご記入お願いします!
Google
WWW を検索 SIDE_FLIP あかずの書斎 を検索

TOPその他PCゲームレビュー > here

家族計画 ~絆箱~ (D.O.)

ゲーム情報

 

メーカー : D.O.
発売日 :
2001年11月2日(無印)
2002年12月27日(絆箱)
2005年2月24日(PS2版)
2005年3月18日(追憶)
ジャンル : ハートフルコメディADV(PS2版以外18禁)

2001年に発売以降、現在に至るまで名作として語り継がれているPCゲームである。

「家族」に何らかの問題を持ち、行き場をなくした者達が集まって始まった相互扶助計画――家族計画。

助け合い、いがみ合いながら、それぞれが自分にとっての絆を見出して、未来へ進んでゆく。そんな物語。

無印版は音声無しだったが、絆箱版から音声が追加、新たなキャラ絵なども追加された。

Story

公式サイトより引用

主人公・沢村司はわりと孤高。
家族の温もりを知らぬまま世間の冷たい風に当たってきたせいで、少しばかり排他的な人間に。

そんな司がある日、路地裏で一人の行き倒れの少女を拾った。
チャイニーズ。
言葉も通じない。

司の提唱するところの「最も関わり合いになってはならない」タイプ。
だが司は、その少女……春花と同居生活をする羽目になってしまう。
それをきっかけに、司の周囲に集まる問題ありげな人々。
彼らの共通点は……家族の欠落。
やがてこの集団は余儀なく共同生活を強いられていく。

家族計画――
それは赤の他人同士が生きるために結束する、互助計画。
モラルも考えも嗜好も異なる、
かみ合わない歯車のような彼らの行く末に、
果たして幸福はあるのだろうか?

 

こんな人にお薦め

  • ストーリー重視なあなた
  • やれ!笑え!そして泣け!
  • まだプレイしてない全てのあなた

独断の評価

評価はあくまでも独断です。当然、発売年代も考慮しています。
SからEまでの6段階評価です

グラフィック A 原画は福永ユミさん。
巷で言われているように、とんがりあごですが、素朴なタッチがこの物語には最適です。また、背景も水彩調でいい感じ!
音楽 S I’ve Soundです。BGMもやはり絵と同じく素朴な感じで物語とマッチしていますが、主題歌が最強伝説です。
システム B さすがに古いw
共通ルートが多いのに既読スキップが選択肢で切れてしまうのはちょっと。でも、古いんだから仕方ない。
キャラ S 高屋敷家はマジ不滅です。
シナリオ S 山田一さんのシナリオです。笑って、泣いて、泣き笑って。胸も苦しいし腹も苦しい。涙腺のパッキンがコワレタナミダガトマランタスケテクレ。
ハマリ度 S 異常信じらんねー
オススメ度 S 頼むからやってみてください。お願いしますお願いしますお願いします。
備考  

 

PAGE TOP

レビュー

まえがき

今さらとかってゆうな!

前々からとかく名作の誉れ高い本作。

しかし、悲しいことに手に入れたのが結構最近だったので、始めて10分くらいで、システムの古くささやら何やらで「また暇な時にやろ~」ってなことになってしまい、数年が経過してしまいました。

で、なぜ今になってやり直そうと思い立ったかというと……最近改めてKOTOKO皇帝スキーになっているワタシ……といえばおわかりか?

OP主題歌「同じ空の下で」がむっちゃよかったから。
そしてニコニコ先生にうpされているOPムービーに撃沈したからなのですね。

で、いざ本格的に始めてみると、とてつもなく深くはまってしまいました。

ひと言で言っちゃうとなんかすごく簡単ですが。

大泣きしたゲームはある。
大笑いしたゲームもある。
ちなみに大泣きしたり大笑いしたゲームもあった。

しかし、大泣きし、大笑いし、そして泣きながら笑ったゲームは始めてかも。

マジで涙腺が大決壊しながら腹筋が引きつっていたのです。

詳細は下の方で書きますが、主要登場人物全てをこれほどまでに等しく、優しい気持ちで慈しむことのできるゲームは……ない!

まだプレイしていない人は、別にここから下の記事は読まなくてもかまわない。その代わり、きっとプレイして欲しい。

きっと、心に残る作品になります。

高屋敷一家

あ

長男 : 高屋敷 司(つかさ)

主人公。
親を失って一人で生きてきた。
何かを怖れるように他人と深く関わることを嫌っていたが、家族計画に関わり変わってゆく。

基本クールなはずだったが、寛との既知外バトルを通じていろんな意味で才能が開花してしまう。

あ

父 : 高屋敷 寛(ひろし)

既知外。
本作の影の主人公とも言える。
元敏腕企業戦士であったが、転落し家族を捨てる。
そのショックか、かなりおかしな人になり、家族計画を提唱した。

声帯模写は世界ランカークラスで、荒事にもめっぽう強い。
そしてその常軌を逸した舌鋒は、司などあっという間に洗脳してしまう。

 

あ

母 : 高屋敷 真純(ますみ)

高屋敷家の良きお母さん。
もう若くないことを非常に気にしている。

人への依存心が高く、つまらないオトコに食い物にされ、絶望のあまり自殺しようとするところを司達に助けられ、家族計画に参画する。

一人で生きてはゆけない弱さはあるが、居場所を与えられると俄然輝く。

高屋敷家でも寛の非常識をさらりと流し、年少組の良き理解者として振る舞う様はとても頼もしい。

あ

長女 : 高屋敷 青葉(あおば)

魔女。女帝。

資産家の令嬢だが、家族とは断絶した状態で、独り高屋敷家に暮らしていた。

言葉で人を呪い殺す。
絵で生計を立てているとのことだが、その絵も人を呪い殺す。

高屋敷家の邸宅の持ち主で、家の維持のために嫌々家族計画に参加。

 

あ

次女 : 高屋敷 準(じゅん)

無口で金が全て。
司とは学生時代の因縁がある。

金儲けのためには手段を選ばず、裏事情にもある程度精通している。

子どもの頃のトラウマで、普通の食事はほとんどとることができず、普段は栄養補助食品と水のみで生活している。

司との「契約」により家族計画に参加。

あ

三女 : 高屋敷 春花(はるか)

母を捜すために中国から密航してきた。
中国マフィアから逃走中に司に拾われ、共に家族計画に参加。

常にへらへら笑っているが、人を傷つけることを嫌い、決断する時は意外とはっきり決断する。

マッサージの腕前は極楽級。
ほとんど辱めに近い。

あ

四女 : 高屋敷 末莉(まつり)

親に捨てられ、親戚には疎んじられ、一人で野宿生活をしていた時に司と出会い、家族計画へ。

育った環境ゆえに、常に人の顔色を見ながら生活を送っている。
最もストレートに家族というものを欲しており、司に命がけ(の脅迫)で家族計画への参加を決心させた。

また、そのロリパワーは過去最強とも噂され、数々の(リアル世界の)猛者をその道に引きずり込んだと言われている。

七生報国のハチマキには、ワタシも危うくやられるところであったことは内緒である。

ちなみに密かにボーイズラブマスター。

音楽

安心の I've Soundです。
BGM全体的にどこか懐かしさを覚えるゲームの雰囲気とマッチしており、違和感はない。

が、特筆すべきは主題歌なのである。

MOMOさんが歌うEndingの「philosophy」も秀逸だが、KOTOKO師匠が歌う「同じ空の下で」は素晴らしすぎる。
懐かしさ、切なさ、さわやかさが同居するその歌は、KOTOKOさんによってさらに希望に満ちあふれた、草原の風を感じるような広がりをもって、心を撫でてくれます。

さらに、この2曲のボーカル曲をベースにしたオルゴール調のBGMがゲーム中に挿入された日にゃ……。

まだシーンが盛り上がってもいないのに、涙腺決壊注意報が心の中に鳴り響く始末。

いい歌というのはたくさんあるのだと思います。
でも、これほどまでに作品と一体化した、作品を体現した曲は希有なものと思います。

グラフィック

キャラ原画は福永ユミさん。

とっても優しい絵。

確かにあごはとがっているけど、この世界になじんできてしまうと、この絵じゃなきゃダメになってくるのです。
もっとうまい絵はいくらでもあるでしょう。
でもね、このゲームのキャラが最先端の萌え萌えのきゅるるんって感じの絵だったらと思うと、鳥肌が立ちます。

辛いことがたくさんあった高屋敷一家だけど、だからこそ彼らを包む世界は優しいものであって欲しい。
そんな願いが具現化したような水彩調の素朴で優しい背景。
やはりこの背景の中に立つ彼らもまた、優しい絵がよく似合うのです。

ただ、イベント絵がもう少し多ければ良かったかな、ということと、立ち絵の表情差分以外のバリエーションがもう少し必要だったかなという不満はありました。
寛や青葉なんかが大けがをしているのに、立ち絵は元気100%のままじゃあ,ちょっとねぇw

システム

まあ、ここはさすがに元々2001年のゲームですからね。
色々厳しいです。

ただ、古いものに古くさいって文句言っても何の意味もないので言いませんが、Save数が27個って言うのはちょっと少ないかな? ということと、既読スキップが選択肢の後も自動解除されないようにして欲しかった、ということは時代を考えても不満点としてあげて良いのではないかと思います。

シナリオ

最高の一言に尽きますが、それではレビューになりませんので、以下延々と書き連ねようと思います。

とりあえず、ケチをつけられそうなところをチョコちょこっとはじめに書いておきます。

共通ルートが長いッスw

1周目は特にクライマックスを早く見たい気持ちが先に立ってしまって、延々繰り返される日常がちょっと辛かったですが、とにかくじっくり腰を落ち着けて延々と日常の会話も楽しむことを推奨いたします。

終わった今となっては、まだまだ足りないと思わずにはいられません。
もっともっと、高屋敷一家の日常を見ていたかった!

そして、ラストがいきなり終わってしまうところも難点と言えば難点かな?

といってもストーリーとしては良い終わり方なので、これはシナリオというよりかは演出の問題かもですが。

では、ケチをつけるのはこれくらいにして、以下延々と賞賛が続きますw

以下はラストに直結するようなネタバレはしないように、と思うものの、ルート途中で明らかになるというレベルのネタバレはありますし、印象的なセリフを何点か紹介していますので、ご注意を。


以下、ネタバレありです。未プレイの方はご注意を


 

準ルート

「こんなわたしに接してくれてありがとう」

「わたし、ここで人間になれた気がする」

ワタシは何となくやっていたら準ルートが一番でした。
親元から、双子の妹、景と一緒に施設に預けられて育った準。
無口で、お金至上主義で、どうやら学生時分には司を含めたオトコに身体を売っていたという準。
外見はメガネっ娘ではあるものの、萌えとは違うボーイッシュ系。

いわゆる美少女ゲームのヒロインとして、そんなに好きなタイプではありません。正直なところ。
準ルートなのに、個別ルートに入ったら長々といなくなっちゃうしw

それでも、そんな準のことをとても大切に思うワタシがいます。

家族計画でも、独り料理も口にせず、内心を吐露することもせず、壁を巡らせ続けた準。

でも、実はそんな彼女こそが最も家族計画に癒された人だったのかも知れません。
欲しているのに手を伸ばすことができない臆病さ。
そんな、弱い彼女だからこそ、遠慮なくみんなが手を差し出してくれる、この高屋敷家が彼女に必要だったのでしょう。

でも、そんな高屋敷家をも彼女は切羽詰まって裏切ってしまう。
かつて司に対したのと同じ、大切なものを裏切ったから、傷つけたからこそ自分の方から背を向けざるを得なくなる。

そんな悪循環からは逃れることができずに姿を消す、準。

辛すぎます。
でも、そんな彼女の旅路の果てには……。

「全部許すね」

もう、俺の涙腺こわれてるんじゃ、ってくらいダダ泣きでした。
そしてそのまま、新生高屋敷一家の待つ家でのフィナーレまで、ちょっと……もう……止まらんのだけど?? なみだがね? 流れるんよ?

よかったね、準。

真純ルート

「死ななくて、良かったな、わたし」

というわけで、高屋敷家のお母さん、真純さんです。

個人的趣向により、以下「ますみん」と呼ぶことにいたします。

が……!
落差激しすぎww

そもそも自殺するところを司達に助けられたことから家族計画に参加したますみんですので、弱く、基本主体性がありません。
独りでは生きていけない、誰かに頼らないと生きていけない。

一般的にはイラついてしまうキャラかも知れません。
しかも家族計画の合間にまであんなコトしてただなんて……!
優柔不断にも限度があります。

でも、なぜか高屋敷気のお母さんとしては一級品。
非常事態には弱いけど、普段の目の行き届き具合はまさに良妻賢母。
特に現在進行形で母親が必要な年代の末莉にとってはなくてはならない存在ですし、孤高主義者でクールが売りで素直じゃない司の心が徐々に溶かされていくのも彼女の存在が意外と大きいような気がします。
もちろんこれは、ルートに関係なく言えることなのですけれど。

ってか、やっぱり家族にとって母親っていうのは要なんだな、としみじみ思わせてくれる、ますみんでした。

ただ、ますみんルートについては、個別ルートだけに、母親としてのますみんより、女としてのますみんにスポットライトが当たることとなります。

結果、実に女々しい(女ですがw)、頼りないところをがっつり見せてくれます。
いくらなんでも、ギャルゲのヒロインが、主人公達の目を盗んで昔のオトコと密会なんてしちゃダメでしょ!?
しかも、司を火事から救ってようやくこれで二人の間に愛が!……と思った矢先、主人公にシモの世話をされることになるヒロインって!!

そんなわけで、リアルにいそうな情けなさ全開のますみんの個別ルート自体はあまり心にくる、ということではなかったのですが、そのラストは必見です。

なんて幸福な高屋敷家!

その光景を眺めて、幸せそうなますみんを眺めていると、思ったのです。

このルートは確かに他に比べるとそれほどドラマチックでもないけれど、その分、リアルなわたしたちの世界で、普通のちょっと弱い人達が、普通に直面して、乗り越えて行かなきゃならない壁、そしてその先に待つ幸せ、そこに至る過程を(ちょっとデフォルメして)描いてくれた、静かに優しい物語だったんだなって。

幸せすぎる高屋敷家を見せてくれてありがとう。
ますみん。

末莉ルート

「……ここに、いてもいいんですよね?」

「ぜんぜん親子になれなかったんですけど、わたしは……そばにいてくれるだけで嬉しかった」

何というか、かわいそうな子オーラが全開の末莉。
いつもオトナの顔色をうかがってばかりの末莉。
疑似だとわかっているのに、あまりにストレートにみんなと家族であろうとする末莉。

やっぱりますみんの時と同じく、結構うっとうしい……途中までは。

でも、事情がわかって傍観者のワタシは納得。
実の親に対しても気に入られるために全力を傾ける必要があった。
でも、その努力も報われず両親に捨てられ、両親を亡くした。
そんな末莉が生きてゆくには、こびを売っていると思われても仕方ないくらい、相手に取り入る必要があったということでしょう。

それでも、実際一緒にいる人間からすると、特に青葉のように世の中に迎合しないことで自分を保ってきたような人間からすると、見ているだけでムカムカっときてしまうのも理解できるところです。

そのあたりを逃げずに正面から描写していることで、この作品の価値がより高まっているのでしょうね。

で、そんな末莉が近づくと青葉が拒絶、という無限ループをたたき壊してくれた、このルートの立役者ともいうべきは、末莉が預けられていた親戚夫婦、とそこの息子の腐れ良太という、世界三大悪人のうちの三名様です。

このご三方の、恥も外聞もかけらほどの良心もない振る舞いによって、どす黒い空気が飽和状態となった、その舞台に颯爽と登場したのは!

歩く五寸釘 高屋敷青葉さま!

激高のあまり、もはや意味不明となった司の罵詈雑言を青葉は翻訳(意訳)します!

「……あなた方が下衆野郎であると申しております」
「あなたがたがクソ畜生でありウジ虫であり生きる価値のない数字でいうところのマイナスであると申しております」
○×野郎に見るも汚らわしい▽□面の醜女、粘着ジジイに因業ババアの%&#$×など□&$×で地獄に○×△□まで焼かれて#$×□腐れビッのマザーァッカーにはせいぜい&%&$がお似合いだとっとと地獄の底で○×△□

コワイヨーw

これで大きく物語が動き、司が末莉を引き取って一件落着……な訳ない。

これから先は、幼女、末莉を家族、そして妹として受け入れた司の壮大な葛藤が始まることとなります。

司曰く「俺はロリコンじゃない」

寛曰く「お前からロリコンをとったら何が残るというんだ」

まあ……そういう葛藤ですね。
多くのプレイヤーの方達も同じ葛藤を経験したことでしょうw

しかし、水を差すようですが、ワタクシはどうにもこうにも幼女は「女」としては見ることができませんので、巷で言われるその破壊力をもひとつ実感はできていないのですが……よかったような、残念なような。

しかし、この手のゲームでは、ヒロインが主人公に惚れる=攻略完了、という図式がありますが、そういう意味で司の葛藤、そしてガマンは特筆すべきです。
こうでなければなりませんでした。

このゲームの目的は、ヒロインとラブラブになることじゃなくて、「絆」を見つけ出すことだから。
家族として受け入れた相手を真剣に思いやることを飛ばして「無事、恋人になってハッピーエンド」はあり得ないのです。

まあ、末莉を女として受け入れた後の司の溺れっぷりは、いっそ清々しいほどですけどね。

やはり高屋敷家の真の魔性の女はあなたでしたね、末莉。

青葉ルート

「うるさい、黙れ」

「司、生きなさい。あなたが得損なった愛情を……私が全て注いであげるから」

青葉こそが真のツンデレである。
青葉ルートを経験すれば、その辺の萌え~な中途半端ツンデレなど有象無象となること請け合いです。

青葉ルート(もしくは末莉ルート)の佳境にいたるまで、青葉は普通にヒドイ人です。
何者も寄せ付けません。

ただ、人生の中で唯一楽しかった祖父との暮らしだけをよりどころに、現在と未来に無関心を決め込んでいます。

高屋敷家に危機が迫っても、独り取り憑かれたように庭を掘り返して何かを探し続ける。
そして、幼かった青葉の日記と共に明らかになる過去の真相。

とてもつらい。

それから青葉は現実に向き合わせてくれた司に心を預け始めます。
でも、それは空っぽになってしまった自分の心を満たすためであったように思います。
本能的な防衛行動とでもいうような。

だから、一見デレ始めたとも見えるこのあたりの青葉の言動は、実は全く違う。

「ようやくツンツンし始めたところなのだ」

普通の女性として、人間として、前を見て、これからの自分にとって大切なものを探し始めたところなのです。
司を意識している自分を認めつつも、人に、親にさえ愛されたことのない青葉は、まだ半信半疑だったのでしょう。

そして司が青葉の肖像画からさらにのくに隠されたもうひとつの真相を青葉に伝えた時、いや、青葉のために青葉と自分を重ね合わせて泣いた時に、ようやく自分の目の前にある「絆」を信じることができたのではないでしょうか。

「なら、あなたは私のものだわ」

「生涯、私と一緒にいなさい」

平然とした口調で語られたそのセリフは、しかし、何よりも重い。

100%そのままの意味だから。
そして、自分の全てを捧げるという意味だから。

その後に訪れる命の危機の場面でそれは現れます。
100%の献身。
何の曇りもなく、理由もなく、だた、そうなのだから。
全ての献身を求めつつ、それ以上の全身全霊の献身を捧げることを、さも当然のように行動で表す青葉。

惚れるっちゅーねん!(ノ^^)ノ

そして、瀕死の重傷を負った司。
すっげーいいシーンなんですよ。
涙腺が緩んでるんですよ。

なのに!

そんなときなのに!!
寛(なぜかここにいますw)をボウガンで仕留めようとする司に

寛「矢パパ事件っ!?」

これだけでもう、涙腺崩壊と腹筋痙攣という相反する身体反応に苦しんでいる私なのに!
青葉様!青葉様までもが!!

「この八ヶ月のお腹の子はどうするの!?」

なんでここでそんな切れ味鋭いギャグが連発されてしまうのか、苦悩してしまいます!

そして迎えたラスト。

あの穏やかな、心からの微笑みには、一切の揺らぎは存在せず。
ただ司の全てを包み込む。

ただの立ち絵の表情差分でしかない、その微笑みは、だからこそ、ひとときのイベントではなく、これから長くゆったりと幾度となく繰り返される「日常」なのだと感じさせてくれました。

一生、お幸せに。
青葉。

春花ルート

母親を捜しに中国から密入国してきた春花。

いつもニッコニコ笑っている春花。

実は、辛い境遇の中、徹頭徹尾、人を思いやり続ける強さを持ち続けていた女性だったのですね。

だから、自分を犠牲にして他人の幸せを優先する春花の笑顔が辛い。

この春花ルートでは、冒頭の名台詞紹介をしていません。
もちろんいい台詞はいっぱいあったのですが……。

あの慟哭のシーンが、あまりに強烈で。
あれが春花ルートの全てだと思います。

春花の母親への思いの強さ。
春花の耐えてきたものの重さ。
そして、ここから前に進んでいくための解放。

その全てがあの慟哭に詰まっていたように思います。

あのラストは、予想通りの展開。
だが、それがいい。

おかえりなさい。
春花。

総括&司と寛w

もうほんとね。

すっごい作品に出会ったもんだ。

どんだけ笑って、どんだけ泣いたか。

もちろん、私ももういい大人ですから、この物語で語られた家族が現実的なものでないことは承知しています。
設定だってありえない。
盛り上げるために、悪人はとことん悪でしかないし。
そんなに本当の意味で深い物語だとは思わないのです。

でもね。

いい物はいいんです。

これをエロゲだからやらないというのは、人生の損失ですが、せっかくやったのにうがった見方をして、素直に感動できないのは、もはや悲劇。

結局最後までプレイしてみて、青葉様をこよなく愛することになった私ですが、それでも、これだけ「みんな」を愛することができる物語は、そうはないです。

その理由は、どのヒロインのルートにしても、単純にそのヒロインと司の関係を描くのではなく、他の人物とのふれあいもきちんと書かれているからでしょう。

春花は抜け殻になりかけていた準を救済した。
準は春花の親探しをはじめとして、いつでも影で司を、高屋敷一家のために動いていた。
ますみんは、基本優しく、時には厳しく、高屋敷一家の母親として愛情を注いでいた。
青葉は自分と似た境遇なのに正反対の生き方を選んできた末莉を嫌悪していたはずなのに、最後まで、命がけで彼女を救った。
末莉は……始めから終わりまで、高屋敷家を自分の家族として欲し続けた。

そして、狂っているのに、決める時は決める寛。

そんな高屋敷家の面々だから、どのルートでもはかなく崩壊してしまうかに見える家族計画は、再びすぐに、あるいはとても長い時間をかけてでも再生します。
もし、「家族計画」が単なる主人公とヒロインのゲームなら、高屋敷家は燃え落ちて、それで終わりにしかなり得ません。

でも、本当の高屋敷家はそうはなりませんでした。
燃えて、一旦跡形もなくなったからこそ、再生がある。
高屋敷家の絆の強さを象徴するために、燃えなければならなかったのです。

一家全員の間に優しさがあったからこそ、切れない絆ができた。
みんなが揃って一つの家族にはなれなかったかも知れませんが、間違いなく一つの絆で結ばれました。

だから彼らを見てきたプレイヤーも、全員に対して等しく愛情を感じることができるのでしょう。

で、上のシナリオ感想ではあまり触れなかった、司&寛ですが。

司はとっても人気の高い主人公のようですが、中盤までの彼のことは私はあんまり好きではありません。
だって、こういうひねたガキよくいるから。
辛いことがあったんだろうと察することはできても、だからといってそれが原因で歪んでしまった現在のその人を好きになれるとは限りません。

でも、よく考えればヒロイン達も同じなんですよね。全般的に。

準は根暗で、お金至上主義でヤバイことにも手を出している。
末莉は人の顔色ばっかりうかがって、泣いてばかり。
ますみんは優柔不断だし、弱いし。
青葉様はヒドイし。

そのそれぞれのヒロインが持つ、歪んだ性格はやはり過去のトラウマから来るものでした。

司も作中で、末莉やますみんのことを、当初は嫌っていたようなことを言っています。
こういうキャラの造形って、物語としてはよくあるようで、キャラの魅力が命のこの手のゲームでこれをやるのは難しいと思うのです。
しかもこの作品の場合は、数多くちりばめられたギャグに中和されているとはいっても、結構佳境を迎えるまでみんなそんな性格のまんまですからなおさらです。

それなのに、どのシナリオも最終的にハッピーなだけでなく、とても清々しい余韻を残すものに仕上がっているのは、本当にすごい。
そして、やっぱり、それぞれのヒロインに対して単に好きになった女性を手に入れたいという方向ではなく、「家族」としてヒロイン達の、触れても楽しくない部分にまで真剣に向き合った司は素晴らしかった。

うん。
やっぱりナイスな主人公ってことで良いと思うのです。

もちろん、それだけじゃなくて、春花のマッサージに蹂躙された司、末莉に溺れまくる司などにも強い愛着を感じるわけですがw

そして、やっぱり家族計画にこの人は欠かせません……といえばおわかりか?

そうです。
高屋敷家の家長です。
寛です。

既知の外にいます。
キレてます。

でも、いい意味でも頭が切れます。
しかも実戦にめっぽう強くて、佳境に来ると正気に返り、家族のために、非情ながらも的確な判断をくだします。

で、名言マシーンです。
一つや二つを紹介しても、伝え切れないというか、流れの中で聞かないと面白さがわからない名言も多いので、ここはレビューを放棄して動画を大量にどうぞw

おまけ

ああ……勢いに任せてやり過ぎたか……?

それにしても、最近はストーリー重視の学園もの美少女ゲームには、主人公の親友のオトコキャラというものが必須みたいになってきましたが、寛は親友ではなく父親役でありながら、その原形のような気がします。

普段はバカやってるけど、決める時は決めるって感じのキャラのことですが、ワタシ的に最強だった「つよきす」のスバル&フカヒレを独りで体現した感のある寛にはまさしく脱帽です。

しかも、ボイスが若本御大ですが、これは強力です。

ボイス無しの無印版でしかプレイしていない方は、やり直すべきです。
って、2010年に言うことではありませんなw

とにかくずいぶん古いゲームのレビューでしたが、文学作品と同じく名作に新しいも古いもないってことが良くわかりました。

では、最後はこの台詞で締めたいと思います。

「……やつら、一人で平穏に暮らせるようなタマじゃないわよ」

PAGE TOP

コメントをお願いします

ぜひ、このレビューに対するあなたのコメントをお願いいたします!
こちらからどうぞ

 

ブックオフオンライン
PAGE TOP

By: Twitter Buttons

BBS

BBS_Top

  • 書評・レビューへのご感想、管理人へのご連絡などお気軽にご記入ください。
  • 2009/6/28リニューアル

あかずの即売所

  • このサイトで紹介した本を購入していただけます。Amazonレビューも確認できます。
  • 即売所入口


参加コミュニティ




サイトの新規登録106

愛しの薬屋探偵妖綺談同盟