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とんち探偵一休さん 謎解き道中 (鯨統一郎)
書籍情報
著者 : 鯨統一郎
発行元 : 祥伝社
新書版発行 : 2003.5
文庫版発行 : 2006.2
「金閣寺に密室」につづくとんち探偵一休さんシリーズ第2作。
今回は茜の両親を捜す旅の道中で起こるさまざまな事件を解決する短編集。
収録作品
- 第一話 難波・明の景色
- 第二話 大和・栗鼠の長屋
- 第三話 伊勢・魔除けの札
- 第四話 尾張・鬼の棲み家
- 第五話 駿河・広い庭
- 第六話 伊豆・鰻の寝床
- 第七話 相模・双子の函
- 第八話 武蔵・猫と草履
こんな人にお薦め
- 前作「金閣寺に密室」を読んだあなた
- アニメ・一休さん世代なあなた
- 気軽に読める短編集をお探しのあなた
あらすじ
以下新書版裏表紙より引用
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京でも賢才の誉れ高い建仁寺の小坊主・一休。
問注所検使官の新右衛門、建仁寺に奇宿する少女・茜と共に、行方不明となっていた茜の両親を捜す旅に出た。
難波、大和、伊勢――だが三人を旅路で待ち受けていたのは、不可思議な事件だった。
進入不可能の禅堂で起きた密室殺人、崖の上に建つ屋敷の消失…。
冴え渡る一休のとんち推理!
やがて、茜の生まれ故郷・武蔵に迫った時、彼らを待ち受けていた驚愕の事実とは?
歴史ミステリの旗手が本領を発揮した、待望のシリーズ最新作!
書評
前作を読んでから取りかかりましょう
とんち探偵一休さんのシリーズ第2作ですが、歴史ミステリとしてもなかなかの読み応えがあった前作「金閣寺に密室」に比べ、ライト感覚で読めるオーソドックスな短編集となっています。
オーソドックスととは言ってもそこは鯨先生のこと。
なかなかにアクロバティックな謎達が用意されています。
密室、遺体消失などは当然ながら、館消失ものが2編も収録されているのがスバラシイ。
ちょっと無茶なトリックもあるのですが、鯨先生の作風からするとごくノーマルな感じです。
今回は一休さんと新右衛門さんが行方不明の両親を捜す茜と一緒に諸国を旅するという設定です。
短編集ですのでとりあえずこの作品のみを読んでも7割くらいは楽しめますが、ぜひとも前作「金閣寺に密室」を読まれてからこの本に取りかかることをおすすめします。
理由の一つは、最後に明らかになる茜の両親についての謎が、前作を読んでいないとピンと来ないということにあります。というか、この作品のあとに前作を読んでしまうと、色々とネタバレですので……。
そしてもう一つの理由は、キャラクターの設定と言いますかなんというか。
前作は長編でしたし、アニメ的な一休さんのイメージを下敷きにしながらも、なかなか細かい歴史描写を交えて独自の一休さん像を創りあげていました。
しかし、本作は短編集と言うこともあり、前作で創りあげたキャラクター像があることを前提に書かれているような感じで、正直なところ、この作品のみで判断すると、元々知名度のある一休さんというキャラクターを都合よく使っただけの凡作に見えてしまう気もするからです。
鯨先生からすると自分の作品で創りあげたキャラクター像を活用して短編集を作られているだけなので、なにもおかしいところはないのですが、なまじ知名度の高いキャラクターだけに、読者側にしてみれば前作を読んでいなくても中途半端にキャラクター像が作ることができてしまい、それが安易な印象を与えてしまう危険性があるということです。
鯨先生のファンであるだけに、その真価を知ってもらうためにも、ぜひとも前作を読んでから本作に取りかかっていただきたいと強く思ってしまうのでした。
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