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マグレと都市伝説 間暮警部の事件簿 (鯨統一郎)
書籍情報
著者 : 鯨統一郎
発行元 : 小学館
文庫版発行 : 2007.4
様々な都市伝説が絡む事件の真相を、間暮警部と谷田貝美琴が懐かしのヒット曲メドレーにのせて解決!
間暮警部の事件簿シリーズ第二弾。
収録作品
- 第一話 マグレと郷ひろみと高速で走る老女
- 第二話 マグレと太田裕美と白い糸
- 第三話 マグレと高田みづえと死体洗いのバイト
- 第四話 マグレと渡辺真知子と人面犬
- 第五話 マグレと小泉今日子と膝が痛い
- 第六話 マグレと近藤真彦と口裂け女
- 第七話 マグレと中森明菜とディズニーランドの誘拐
こんな人にお薦め
- 懐メロ歌謡曲が大好きなあなた
- 鯨流こじつけ道の神髄を味わいたいあなた
あらすじ
以下、文庫本裏表紙より引用
-
真夜中の殺人現場から走り去った口裂け女、爆破殺人のあった学校で目撃された人面犬。
ぼくと中瀬ひかるが勤める〈大川探偵事務所〉には、なぜかこのごろ「都市伝説」が絡んだ事件ばかりが舞い込んでくる。
そして、事件のあらましが判明してきたころ、決まって登場するのが間暮警部と部下の谷田貝美琴。
ふたりは、懐かしいヒット・メドレーを歌い始める。
そこに事件を解くカギがあるというのだ!?郷ひろみ、太田裕美、高田みづえ、渡辺真知子、小泉今日子、近藤真彦、中森明菜……。
ヒット曲満載で送る前代未聞!?の「歌謡曲」ミステリー。
書評
こじつけの神髄を堪能しよう!
前作で、「歌謡曲見立て殺人」というジャンルを確立(?)させた間暮警部シリーズの第二弾です。
といっても、さすが鯨先生。
単純に同じことは繰り返しません。
パワーアップしています。
今回はそれぞれの事件において、見立てに使われるのは一曲だけではなくて「メドレー」です。
もう歌いまくります。
さらに今回は、「口裂け女」「人面犬」などの都市伝説もキーワードになっています。
正直なところ、事件のトリックなんかより、このこじつけのアイデアにこそ感心してしまう作品です。
しかも、今回は各話のラストで語り役の小林君の兄が登場するのですが、このお兄さんが昭和歌謡曲やフォークの研究家で、その物語で取り上げられた歌手についての蘊蓄を繰り広げ、マイベストスリーを発表してくれたりします。
これだけでも昭和歌謡曲ファンならば、ほくそ笑みながら読むことが出来るでしょう。
もちろんそれだけならば、鯨先生が登場人物の口を借りて蘊蓄を語りたいだけなのか? と思ってしまうのですが、そうではありません。(いや、実はそうなのかも)
そこに事件を解決した間暮警部が現れて歌った一曲を聴いたお兄さんが、さらに「本当の」事件の真相を推理するという趣向なのです。
すなわち、本作品ではマグレ達による、メドレーに見立てた事件の真相の指摘、小林君とひかるの結構まともな事件の推理と解決に加えて、もう一度マグレの指摘した「メドレー見立て殺人」の裏に隠された真実の意味をお兄さんが看破するというスタイルになっているのです。
普通のミステリでもよく使われる、最後のどんでん返しという手法を、さらにメドレーや都市伝説に絡めて表現されているのですね。
一通りのメドレーに事件を見立てるだけでも大変なのに、同じ事件に同じメドレーを当てはめて、違う解決を導くという、他人には真似の出来ない鯨先生のこじつけ道の神髄がそこにはあります!!
ただし、当たり前に読むと、本作品の事件は「メドレーに見立てて起こされた事件」ではなく、「起こった事件にメドレーを当てはめた」と言った方が正しいような気がします。
そういうのは「見立て殺人」とは呼ばないような気がしますが、間暮警部に「これは~~メドレー殺人事件です」と断言されてしまうと、なぜか納得させられてしまいます。
普通の本格ミステリとは違います。
いわゆる「トリック」はそれほど凝ったものではないし、現実的でもありません。
でも、本格ミステリの論理的解決って、多かれ少なかれこじつけっぽい屁理屈が含まれているような気がしますし、それこそがアクロバティックな展開として読者を驚かせてくれる、楽しい作品のための大切な要素なのかもしれません。
だから、この作品は楽しいのでしょう。
今回の見立てには、ダジャレも満載でしたね~。
「♪た~と~え~ば~」
「♪田とエバ~ 田とエバ~ 田とおエバ~」
大笑いいたしましたw
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