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マグレと紅白歌合戦 間暮警部の事件簿 (鯨統一郎)
書籍情報
著者 : 鯨統一郎
発行元 : 小学館
文庫版発行 : 2009.1
間暮警部シリーズの(おそらく)完結編。
初の長編で、今までのシリーズでちらほらと見え隠れしていた「ブラックローレライ」との全面対決!
そしてシリーズの謎の全貌が明らかになる。
こんな人にお薦め
- 昭和歌謡曲が好きなあなた
- 間暮警部シリーズが好きなあなた
- やっぱり年末は紅白なあなた
あらすじ
以下文庫版裏表紙より引用
-
東京タワーのてっぺんに突き刺さった人間の死体……。
警察庁特命刑事・間暮誠は、その光景を一目見るなり呟いた。――「見立て殺人です」。
事件はそれだけに留まらない。
北は北海道から南は沖縄まで、日本全国で発生した二一の奇天烈な殺人事件。
その一方、治安を乱す元凶として日本中から次々に消されていく歌謡曲。
見え隠れするのは謎の集団「ブラックローレライ」の影……。「歌う警部マグレ」シリーズ第三弾。
初の長編の舞台となるのは、なんと“紅白歌合戦”!
歌謡史に残る数々の名曲が事件の謎を解き明かし、勝敗の行方が日本の命運を左右する!?
書評
鯨先生の総力を挙げた「裏」紅白歌合戦!!
事件が起こると颯爽と現れて放つ台詞は「見立て殺人です」
類い希な美声に載せて歌謡曲見立て殺人の謎を解決する間暮警部シリーズもどうやら完結編のようです。
2008年には波田煌子シリーズも完結しましたが、その時と同じくシリーズ初の長編として登場した本作は、今までの間暮警部シリーズを遥かに凌駕する圧倒的な昭和の名曲のオンパレードです。
今までの謎と共に、謎の集団「ブラックローレライ」の全貌も明らかになるのですが……もう無茶苦茶です。
シリーズ未読の方がいきなりこの作品を読めば、唖然としてしまうかもしれません。
それでなくても一種バカミス的なテイスト満載のこのシリーズですが、この作品はそこを突き詰めています。
今までのシリーズ作品を読んで、受け入れられる人にだけお薦めしたい作品です。
それにしてもどんどん驚愕の事実が明らかになる作品ですので、実に書評が書きにくい。
今までの作品の中に伏線があろうが無かろうがそんなことは関係なく、どんどん無茶な真相が明らかになっていきます……。
そして極めつけは、「裏」紅白歌合戦……。
まさに昭和歌謡の集大成的ラインナップ……ってなんでミステリの中でそんなことが起こりえるのか?
ああ……真面目に書評を書く気になれない……。
やたら「……」が多くなってしまいます。
が、一応ミステリとしての感想をひと言。
さすがにもうミステリとは言えませんねぇ。
いかに事件と歌謡曲を結びつけるか(こじつけるか)の一点です。
こじつけの天才たる鯨先生のある意味本領発揮です。
波田煌子シリーズが完結編「蒼い月 なみだ事件簿にさようなら!」でちょっと普通のミステリよりの展開になったのとは真逆の展開です。
意外な展開はてんこ盛りですが、本作品のみで考えると、伏線もなにもなく、ただただ荒唐無稽な展開を持ってきたと言ってしまってもおかしくない気がします。
それでも私がこの作品を楽しめたのは、今までのシリーズ2作を読んで、キャラクターにそれなりの愛着を持っていたからでしょう。
結局のところ、私にとっては結構心に残ったこの作品なのですが、それは言ってみればシリーズ3作品まとめて一つの連作集といった観点からであり、やはりこの作品単体で捉えると、その無茶すぎる展開についていけない人も多いのではないかと思ってしまいます。
それにしても、鯨先生にとってはおそらくやりたいことをやり尽くしたといった感じではないでしょうか?
単なる歌謡曲の羅列だけではなく、いろんなカルトなネタも満載で、さすがに他の作品ではできないであろうことを思いのままに詰め込んだ感じがします。
もちろん、だから楽に創れただろう、とは思わないのですが、これだけ好き勝手な作風が許されてしまう鯨先生という方は、やはり幸せな作家さんだなぁと思わずにはいられません。
ビバ!
前泊ナナ!!
相変わらず痴漢囮捜査を続けていらっしゃるようで……。
・ お気に入りのフレーズ
「死村剣」
「あいーん」
死村が妙な返事をした。
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