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厭魅(まじもの)の如き憑くもの (三津田信三)

書籍情報

著者 : 三津田信三
発行元 : 原書房
単行本発行 : 2006.2
発行元 : 講談社
文庫版発行 : 2009.3

怪奇幻想作家、刀城言耶(とうじょうげんや)が怪奇色の濃い事件と対峙するシリーズ第一作。

本格ミステリとホラーのそれぞれの魅力を損なわずになされた融合が評価されているシリーズである。

こんな人にお薦め

  • 山奥の村、怪異、因習、憑き物などのキーワードに反応してしまうあなた
  • 合理的に割り切れないものがあると言えるあなた

あらすじ

以下文庫版裏表紙より引用

神々櫛村。
谺呀治家と神櫛家、二つの旧家が微妙な関係で並び立ち、神隠しを始めとする無数の怪異に彩られた場所である。

戦争からそう遠くない昭和の年、ある怪奇幻想作家がこの地を訪れてまもなく、最初の怪死事件が起こる。

本格ミステリーとホラーの魅力が圧倒的世界観で迫る「刀城言耶」シリーズ第一長編。

 

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書評

「怪異は怪異のままで」……でも本格ミステリ

山奥の古い因習に囚われた集落、神々櫛村
谺呀治家(かがちけ)を中心とする憑き物筋の「黒の家」と、神櫛家を筆頭とする日憑き物筋の「白の家」の対立構図。
そして村全体を支配する「山神様」「カカシ様」「厭魅」とそれにまつわる数々の怪奇、神隠し。

そんな中、神々櫛村を訪れた怪奇幻想作家、刀城言耶が遭遇する奇怪な殺人事件を解決する、とそんな物語なのですが、一般的な評価としてもっともよく言われるのが「ホラーと本格ミステリの融合」ということでしょう。

すなわち怪奇は怪奇のまま、しかも怪奇的な事件に現実的な本格ミステリ的回答を付与するという、なかなか言うのは易し、行うのはとっても難しそうな作品になっているのです。

このシリーズの探偵役は刀城言耶、怪奇幻想作家で、大の怪異譚好きという変な人です。
しかし、この設定が生きてます。
刀城言耶がいわゆる本格ミステリ的探偵だったとしたら、舞台設定が同じであったとしても、おびただしい怪異の影をことごとく白日の下に引き出し、現実的、合理的解釈でもって説明してしまうことになってしまうでしょう。

そこを刀城言耶は合理的解釈が出来ない怪異は怪異としておいておく、という解決をするので、合理的な解決を見た事件の背後に、さらに説明できない何かが潜んでいるような、そんな雰囲気を保ち続けているのです。

しかし、読み終わってふと思いました。

もし刀城言耶が先に述べたような「探偵らしい探偵」だったとしても、同じ解決にはたどり着けたかも知れないな、と。

もちろんその場合、説明されない怪異が多く残ってしまうので、結局それらの要素は本文中で詳細に記述されないことになってしまうのでしょう。
ただ、それでもこの物語は推理小説としては充分成立してしまうような気がするのです。

そう考えると、この物語の多少詳細に過ぎる村の因習や怪奇現象の描写などは、ある意味本格ミステリを怪奇的な雰囲気で飾るための装飾であるようにも思えます。
が、その一歩間違えればただのお飾りになってしまいそうなホラー要素は、描写の細かさと、探偵自身がその空気にどっぷりつかってしまうというスタイルがゆえに、単なる飾りではなく、本格ミステリ要素に並ぶこの作品の要素となったように思います。

つまり、この作品はホラー要素がミステリ要素と並ぶことによって、単なるお飾りのホラー要素という地位を脱却して「融合」していると見えるのでしょう。

さて、物語本編についてですが、冒頭で述べたコテコテの伝奇ホラー的設定に加え、谺呀治家の叉霧と紗霧による憑き物落としの描写、刀城言耶の入村に至るまでの描写、村の至る所で村のすべてを見張るように立つカカシ様と、あまりホラーに食指が動かないわたしでも、その雰囲気に引き込まれる感覚があり、期待がふくらみました。

そして、次々に起こる殺人も、その不可能的状況はもちろん、遺体にはカカシ様を模した飾り付けがなされます。

いかにも本格ミステリ的な殺害状況なのですが、それまでに念入りに綴られた村の因習と過去の怪異が功を奏して、本格ミステリだと決めつけて読んでいるわたしのような読者でさえ、ホラー要素抜きの解決が出来るのか訝しんでしまう雰囲気があります。

ただし、一応ケチをつけさせていただきますが。

この物語は事件が起こるまでに、村の因習や怪異についてその事実はもちろん、歴史的な研究らしきものまで、かなり詳細に語られますが、いざ事件が起こって、しかも連続殺人にまで発展してきても、同じペースで怪異に対するうんちくが語られ続けますので、中盤から終盤にかけて、非常にテンポが悪い感じがしました。

やはり、前半にしっかり気を持たせた分、事件が動き始めたら一気にスピード感を持ってほしかったように感じます。

また、探偵・刀城言耶には、もう少ししっかりしてほしいところです。
謎解きにどんでん返しはつきものですが、探偵自身がガチでとんちんかんな謎解きをしては、関係者の指摘によってどんどん自説を変えて別の謎解きを披露するというのはさすがに……カッコ悪い……。

ま、まぁ、シリーズ第一作ですから、これから刀城言耶がもう少し頼れるオトコになってくれることを祈ります(笑)


以下、ネタバレありです。未読の方はご注意を


カカシ様……どうしても田んぼに突っ立てるかかしを想像してしまうので、ちょっとラストの謎解き部分は「えっ?」って感じでしたぁ。

あと、あの叙述トリックっぽいやつですが、筋は通っているのかも知れませんが、なんだかな~と思いました。
細かすぎて読者が読み飛ばしても仕方がないような点を「伏線です」っていわれてもあんまり騙された感がわきません。
それなのに、刀城言耶の口を借りてそのトリックを「どうだ!」といわんばかりに延々と喜々として語られても、ちょっと困ってしまうワタクシです。

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