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今宵、バーで謎解きを (鯨統一郎)

書籍情報

著者 : 鯨統一郎
発行元 : 光文社
新書版発行 : 2010.4 カッパ・ノベルス

バー「森へ抜ける道」に集うヤクドシトリオの三人と桜川東子(はるこ)の安楽椅子探偵型短編集第三弾。

海外童話、日本昔話に続き、今回はギリシア神話とミステリのコラボレーションに桜川東子が挑む。

収録作品

  • 第一話 ゼウスの末裔達
  • 第二話 アリアドネの糸
  • 第三話 トロイアの贈り物
  • 第四話 ヘラクレスの棺
  • 第五話 メデューサの呪い
  • 第六話 スピンクスの問い
  • 第七話 パンドラの真実

 

こんな人にお薦め

  • 安楽椅子探偵物が好きなあなた
  • ギリシア神話が好きなあなた
  • ワインとチーズと昭和うんちくに目がないあなた

あらすじ

以下新書版裏表紙より引用

バー〈森へ抜ける道〉に夜ごと集う、ヤクドシトリオこと私立探偵の工藤とライターの山内、それにマスターの島。

ワインとチーズを楽しみなガら、語られるのは少年時代のなつかしいサブカルチャーをネタにした馬鹿話と、巷間をにぎわしている未解決殺人事件の顛末……。

もうひとりの常連で酒にも推理にももっとも強い、桜川東子のギリシャ神話を援用した名推理から目が離せない。

以上引用終わり

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書評

やっぱり欲しい、新解釈!

ワタシが鯨先生の作品で好きな女性と言えば、そう、波田煌子です。

が、その次に来るのはやはり「邪馬台国はどこですか?」をはじめとする数作品に登場する早乙女静香女史でしょう。

さらに「すべての美人は名探偵である」その早乙女女史と共に、遺憾なくその美しさと頭脳明晰さをこれでもかと見せつけたのが、本シリーズの桜川東子さんです。

シリーズ当初は女子大生だった彼女は大学院に進み、本作品では院生なのか、卒業して研究者になったのかは判別できないものの、現在はギリシア神話を研究しているとのこと。

今までのシリーズ2作品では、海外メルヘン、日本の昔話の新解釈と共に難事件を解決してきた桜川さんですから、当然今回はギリシア神話の新解釈と事件の真相をどう結びつけるのか、という点が主題になるはず。

ですが、どうも切れ味が悪い。

題材となるギリシア神話は、ゼウス、アリアドネ、トロイの木馬、ヘラクレス、メデューサ、スピンクス(本来エジプト神話に登場するが、ギリシア神話にも登場する)、パンドラと有名どころが揃っているのですが、ひと言で言うと「新解釈」じゃない?

えーと。
ワタシの読解力がないのかも知れませんが、普通に神話を引き合いに出してきて、事件を解決するといった感じで、「この神話は本当はこんなことを意味していたんだ!」という部分がなかったように思います。

また、その神話と事件のつながりが希薄で、これは神話持ち出す必要がなかったのではないか? と思ってしまいました。

そして、本作品において事件のミステリ的品質は失礼ながら、それほど高いとは思えません。

新解釈もなし、事件も凡庸、神話と事件の関連は薄い、となってしまうと、さすがに鯨先生ファンのワタシでも、手放しに褒めちぎることはできないのです。

たとえ事件自体が凡庸でも、一見事件と関係なさそうな神話が登場し、さらにその神話に驚きの新解釈を見出し、その新解釈こそが今の事件と酷似する、という展開ならばとても良い、そして鯨先生らしい作品になるのになぁと思うと、残念でなりません。

さらに悪いことに、桜川さんの描写が薄すぎる。

ヤクドシトリオが喋っていて事件の話になると、いきなり首を突っ込んで事件の真相だけさらっと語って終わりという感じです。

今までのシリーズ作品を見ている人ならある程度イメージはわくのでしょうが、初読の方には桜川さんの魅力がイマイチ伝わらないと思います。

波田煌子シリーズも、事件自体はミステリ的には首をかしげるものが多かったのに、(ワタシ的に)これだけ魅力的なのは、やはり波田煌子の素晴らしい個性があってこそです。

確かに桜川さんはシリーズ当初からそんなにキャラが立っているわけではなかったので、波田煌子と比較するのは酷かも知れませんが、「全ての美人は~」で早乙女女史とタッグを組むことで,とっても活き活きとしたキャラになってきて、楽しみにしていたので、もう少し桜川さんのキャラ描写を丁寧にしていただきたかったところです。

もちろん、本作も悪いところばかりではなく、ヤクドシトリオによって繰り広げられるワインとチーズ(今までは日本酒とおつまみでしたがw)、そして昭和のうんちくは楽しめますし……っていうか、マスターがどんどん変質者みたいになってきているのが心配ですが、そんなマスターの言動と、地の文でそれにツッコむ語り部・工藤さんの掛け合いもまた楽しいです。

そう考えると、それほど分厚くもない本に七話の物語が詰め込まれており、なおかつくだんのうんちく話が長々と披露されるのですから、事件についての記述が薄くなるのもしかたがないのかも知れません。

我ながら、本末転倒的な変な理屈だと思いますが、鯨作品は全ての要素をひっくるめて評価すべき、珍ジャンルに属するというのが自説です。

でもやっぱり、シリーズ次回作では、事件がつまらなくても良いから、あっと驚く新解釈を見せていただきたいものです。

 

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