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タイムスリップ明治維新 (鯨統一郎)
書籍情報
著者 : 鯨統一郎
発行元 : 講談社
新書版発行 : 2003.7
文庫版発行 : 2006.7
女子高生、麓(ふもと)うららが歴史上の偉人と共に活躍する「タイムスリップ」シリーズ第二弾。
こんな人にお薦め
- 維新好きだけど冗談を笑って許せるあなた
- 「邪馬台国はどこですか?」がお気に入りなあなた
- はっきり言ってミステリじゃないけど、それでもいいあなた
- 読みやすいのに、濃い。そんな長編作品を探しているあなた
あらすじ
以下、文庫本裏表紙より引用
-
渋谷の女子高生・麓(ふもと)うららは、幕末にタイムスリップしてしまった。
時代を我がものにしようとたくらむ、小栗上野介によってゆがめられた歴史を、正しく進めなければ現代に戻れない。
うららは、桂小五郎や坂本竜馬、西郷隆盛、勝海舟の間を奔走し明治維新を目指す。『タイムスリップ森鴎外』に続く第二弾!
書評
なんだか妙に生々しいのですが!
なんだか、前から思っていたのですが、鯨先生はエロいのです。
そのライトな作風にもかかわらず、妙に女性の描写が生々しかったりするのです。
本作の主人公、ふもと裏らは女子高生ですが、シャワーを浴びている最中に襲われそうになります。
で、江戸時代末期にタイムスリップすると全裸で倒れているところを桂小五郎に助けられます。
その後いろんな男どもの餌食になりそうになりながら、結局ロストバージンまでしてしまいます。(合意ですが)
まあ、ある意味リアルなのかもしれませんが……そういうところだけリアルなので困ってしまいますw
まあ、鯨先生はエロいのでしかたありません。
そういえば、「すべての美人は名探偵である」なんかでも、静香先生と東子の辛みとかが妙にやらしかったのを思い出します。
というわけで物語ですが、
タイムスリップしたうららが、もとの時代に帰るために、歴史を現実と乖離させようと企む敵を相手に、様々な明治維新の立役者達と協力して維新を成功に導く、というものです。
敵は幕府の重鎮に化けています。
こいつがめちゃくちゃやってくれます。
ダイナマイトを作ったあの人や「奴隷解放の父」なあの人を日本に連れてきてしまいます。
もちろん対抗するうらら達も負けてはいません。
やる気のない坂本龍馬に、なぜか現代から持参していた司馬○太郎の「○○がゆく」を見せてやる気を出させたり。
それでは、とことん荒唐無稽な物語なのか? というと、難しいところです。
確かにご都合主義満載ですし、非現実的ですが、「邪馬台国はどこですか?」で鯨先生が披露したように、バックグラウンドの知識がしっかりしているものですから、あんまり荒唐無稽に感じません。
少なくとも、維新を成功に導こうとするうらら達の行動はそれなりの歴史的根拠を持ち、なかなかの緊迫感がありました。
ちなみに「邪馬台国」での歴史の新解釈が、本作品でも活かされていますので、先に「邪馬台国」を読まれた方が、より本作品を楽しめると思います。
あと、時代背景もあって、岡田以藏、沖田総司、中村半次郎達をはじめとする剣豪達の闘いも頻繁に描かれます。
ここにうららと一緒に旅を続ける剣の達人、薔薇之介も絡むのですが、それほどリアルな決闘シーンが描かれるわけではないものの、大志のためにためらいなく相手を斬る志士たちと、相手が歴史に名を残す剣豪達と知りながら、うららのために命がけで彼らに剣を向ける薔薇之介の姿が活き活きと、でも少しの哀しみを含んで描かれています。
最終的には無血開城という、革命としては理想的な結末を迎えた明治維新ですが、その影に、維新という大きな歴史の流れに巻き込まれた大勢の人たちの血が流されたことを、軽いタッチの物語ながら思い知らせてくれます。
鯨先生の作品らしく、読みやすく、一気に読めてしまうのですが、それとは裏腹に壮大な気分を味わえるお得な一冊だと思います。
他のシリーズは現時点でまだ未読ですので、近々読んでみたいと思います。
三人の別れのシーン。
よいですね。
長い、長い闘いの日々のあとに訪れた、あまりにあっさりとした別れ。
人の世の無常を感じました。
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