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彼女が死んだ夜 (西澤保彦)
書籍情報
著者 : 西澤保彦
発行元 : 角川書店
新書版発行 : 1996.8
文庫版発行 : 2000.5
発行元 : 幻冬舎
文庫版発行 : 2008.6
※ 角川書店から発売された新書版(角川ノベルス)には副題「匠千暁第一の事件」がついている。
匠千暁(タック)、辺見祐輔(ボアン先輩)、羽迫由起子(ウサコ)、高瀬千帆(タカチ)の四人が活躍するタック&タカチシリーズの第二弾。
時系列的には匠千暁シリーズ第一の事件である。
こんな人にお薦め
- 安楽椅子探偵型の物語がお好みのあなた
- 匠千暁シリーズの入口はコチラ
- ユーモアの中にもダークな味わいを求めるあなた
あらすじ
以下、幻冬舎文庫版裏表紙より引用
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門限六時。
家が厳しい女子大生ハコちゃんはやっとアメリカ行きの許しを得た。
出発前日、親の外出をいいことに同級生が開いた壮行会から深夜帰ると部屋に女の死体が!
夜遊びがバレこれで渡米もふいだと焦った彼女は自分に気があるガンタに遺棄を強要する。
翌日発見された遺体は身元不明。
別の同級生も失踪して大事件に。匠千暁、最初の事件。
書評
やっぱりダークな西澤ワールド
出版順では西澤先生のデビュー作「解体諸因」につづく二冊目ですが、時系列的には第一の事件で、タック達四人組も大学生です。
解体諸因は、ウサコは登場せず、タカチも一話だけ、さらにはタックとボアン先輩も顔を合わすことすらなく終わるという感じで、正直あまり匠千暁シリーズという印象がないだけに、シリーズ未読の方に匠千暁シリーズへの導入編としてオススメするのはこちらになりそうです。
このシリーズのキーワードといえば……「酒」
本作もプロローグ後、ボアン先輩主催の飲み会のシーンから始まります。
飲酒運転などもしていらっしゃいますが、まあスルーしておきましょう。
そして、もう一つのキーワードが「安楽椅子探偵」型小説だということでしょう。
それも、少ない物証で四人が推理という名の妄想を飛ばし合う、妄想爆発型です。
実は、のちに刊行されている「麦酒の家の冒険」の書評で、このスタイルを批判しております。それは、いろんな推理が出るのはともかく「それが真相でした。終わり」となってしまうのが、ちょっとご都合主義的に過ぎると感じたことが要因だったのです。
が、今作も同じように難易度の高い、長編での安楽椅子探偵ものであるにもかかわらず、「麦酒の家」ほどの不自然さは感じませんでした。
まあ、実際犯行の流れ自体にはちょっと無茶な部分もあるのですが、派手などんでん返しがその不自然さをうまく隠してくれている感じしますし、動機から犯行の流れがきちんと説明されるので、妄想を広げるだけ広げて、あっさりそれが正解でしたといって終わってしまう「麦酒の家」に比べて納得感が高かったように思います。
また、一応真相が明らかになったあとで、わたしがちょうどこれはちょっと……と感じていた部分を見事に明らかにしてくれたので、その爽快感で満足できました。
ミステリとして、とてもよくできた作品だと思います。
いやぁ、それにしても西澤先生の作品らしくダークです。
「チョーモンイン」シリーズでもそうですが、シリーズキャラクターが比較的漫画的な設定で、ある種コミカルなのに、事件や事件関係者に対してはシビアに汚い部分から目をそらさずに描かれているので、そのギャップが一層ダークさを際だたせています。
正直なところそういうのはちょっと苦手ですが……。
また、以前にも書いたのですが、やはり女性陣のキャラクター像にピンときません。
ウサコはそもそも(わたしが読んだ本に関しては)描写自体が薄いので、逆に気にならないのですが、タカチについてはやはり、地の文でクールだなんだといくら書かれても、その言動を見ているとその設定が充分に活かされているとは思えないのです。
ボアン先輩達といるときにタカチのそういうある種普通の部分がでてしまう、ということなのかもしれませんが、なんせほとんどタック達と一緒にいるものですからw。
一応ちょっと文句を言ってはみたけれど、この作品は面白かったです。
オススメです。
どーしても理解できない点が一つ。
※ 一応名前は伏せておきます。
犯人が被害者を殺したあと、その髪を刈った理由はわかるのですが、なぜ遺棄するときに、その被害者のものではない方の髪の束を置いていったのでしょう?
素直に被害者本人の髪の束を置いておいたらいけなかったのかな?
パンストの色が違うかったりしたのを気にして、はじめから髪の束はタック達が見たものを残しておくつもりなら、そもそも被害者の髪を切る必要はあっても、パンストに詰める必要はなかったと思うのです。
誰かわかる人、教えてください!!
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